B@気になる孫正義さんの言葉

【情報】 (多分、建物を建てようとされている方々向きの内容ではありません)


絵描きの現実


気になる孫正義さんの言葉


ふらっとチャンネルを廻していたら(何と古い言い方!)、村上龍の「カンブリア宮殿」の途中だった。
ゲストのソフトバンク孫会長の若者への話には、心を打たれるところがあり、ウーム。
高校を出てすぐにアメリカ社会に飛び込んだとのこと。
若い時の夢は本気になれば絶対実現出来るのだから、本気なら、できるだけ夢は大きい方が良い。でもそれはお金のことでなく、世界一の「パンケーキ職人」になるというのでもいいのだ、と。
ここから、若いころは絵描きになりたいと思っていたことがある、という話になり、「それは絵で儲けようとしたり、有名になりたいからではなかった」ということになった。


テレビとはいえ、孫会長をこれほど身近にしげしげと見つめたことはなかった。
ご本人は真面目に事実か実感を述べたのであろうし、もしかしたら成しえなかった願望を伝えようとしたのかもしれない。
そこには作為も偽善も感じられなかった、と言いたい。素直なお気持ちだったのでしょう。


でも、孫さん、それを言ってしまうのはまずいのではないですか、というのが率直な僕の反応だった。
絵を描いていて食えないのではしょうがない。絵を描いていてもいいから、それで食える様にならなければどうしようもないのだ。なぜ、ご自分がこれだけ財を成すに至ったことを、絵で食えるようになる道について、応用編として語ってくれなかったのだろうか、という気持ちに襲われた。
村上隆まで引き合いに出すつもりはないけれど。


それとこれとは違うから、話にならないと仰るのだろうか。あるいは、ちょっと思いつきを語ったまで、と?
実際、今時、絵を描いていて将来有名になる必要はないと思っている若者は絶無だろう。それは食えるようになることといわば交換条件でもあるからだ。
そんなこと、今時のほとんどの若者は常識に考えているに違いない。そして、それを実現するのはとんでもない問題なのだということも、若者は実感しているだろう。


もちろん長谷川りん二郎とか、田中一村とかの孤高で静筆な精神の画家のことを忘れているのではない。哲学的とも言える帰結で、そこに追い詰められた、あるいは自分をそこに持って行った画家の「名誉心」のことを、更に考えた上での言い方になる。
確かに、結果から「儲かる絵」などを考えている者は最低だ。「絵そのものの内容」は経済にまったく関係がない。そのうえでの話だが、では、絵以外で食える道を見つける方法を考えて、とでも言うしか無かったのでは。
絵描きについて言及するなら、もう一言、二言、重要なことをつけ加える必要があったように思われるが、それは問題をこじらせたかも知れない。


孫さんの発言は、おカネの問題を通して人間に決定的な影響を与えることを知ってきた財界人であり、影響力がある人だけに、小々不用意のそしりを免れないような気がした。