美しくない日本の街

【団体内での「セミナー報告」を転載】
(少し遅くなりましたが、以下、ご参考まで。 「港地域会」の存在を固めてゆくためにも大切なイベント。 文責は大倉)



アーキテクツ・ガーデン(*)参加イベント:港地域会情報:MASセミナーNo.7

「日本の街並はなぜ美しくないのか」(年間テーマ)
「建築家は街にどのように関われるか」(今回テーマ)
会長:大倉冨美雄



大きなテーマ。それだけに誰にとっても語りがいがあり、事実、洋の東西、江戸から現代まで、政治から経済にまで広がった。
今回はメンバー数人が語りべ(今井、大倉、鈴木、連)となり、それを進行役(小倉)が会場の意見も加えてまとめる形で、最初に各人の思いを述べ、次に起承転結で進めるという新味を狙った。
「市民の視点や価値観を加味した街づくりが必要」で、そのためには市民が設計プロセスに「参加すること」が大事(連)、成田空港から都内に入る時に感じる「がっかり感」はどこから来るのかを問い(鈴木)、明治維新と太平洋戦争によって、外部からの模倣と圧力で創り上げられたメンタルが造った街並(大倉)、高級マンションに一人で鍵を開けて入る子供の例から、インフラが出来ても血が通わなければ意味が無い。「都市の日本人は仮物の中に住んでいる」(今井)と、最初から全方位の展開。
以下、発言者名を飛ばし会場からの意見も含め列挙する。


起/(良くないところ):経済効率優先、文化の解体、フェイクの文化、所有の意識が強すぎる、コミュニティが無くなっている。
承/(いいところ):あいまいなところが大切。協力して何かをする力がある。感性は極めていい。
転/(創る技術について):自然素材を活かし時間をかけたものは良い。合否の自己判断もなく、決められたことに従い過ぎる、(本当の)建築家でない人たちが地域開発や街区を設計している。建築家は消費者に対するアピールが足りない。
結/(どのように関われるか):、ホンモノ志向で街づくりを。そのためにはホンモノを見極める教育と社会の仕組みを。超高令化、人口減下の地域住民と良く語り合い(プロセスを重視)、それを行政に働きかける。「建築基本法」の視点も取り込んでゆく。
このテーマは日本人の根本問題に関わると共に、その分、ある意味で尊大とも言える問題でもある。しかしそのことが、現代日本社会が追い詰められているあらゆる分野の問題の解決要求からして、誰にとっても放置して置けないのも事実であり、その観点からも真剣な議論が交わされ、Uチューブでも配信された。
この後ワイン・パーティが開かれ、参加者の懇談が遅くまで続いた。(6月30日:JIAクラブにて)



「処士横議の場」を再活性化
続けて、メンバーの大沢悟郎氏が移転都合で他地域会に移籍することとなり、有志による歓送会が建築家会館内にある「バー」で行われた。休止されていたのを建築家クラブ活用部会の稲垣雅子さんらの、再生して行こうという活動に協力する形で開催された。大沢氏の父上もこのカウンターで語らったとのことで、もともと前川國男が「処士横議(処士=民間にあって仕官しない人:「意見のある者が身分を問われず、自由に議論する」という故事による)の場」としてこのバーを作ることを主張したという。夕日に映える緑が身近に見え、日暮れとともにメンバーの興に乗る姿もここならではと思わせ、よい企画になったと自負している。
大沢氏も当地域会への想いを深めてくれ、今後とも案内には参加してくれるとのことで、歓迎会でもある一夜となった(前記のワイン・パーティも大沢氏の努力による)。

(*)アーキテクツ・ガーデン:(社)日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部の年間イベント。