ミラノから

 

ミラノ在住の友人、深沢さんが昨年暮、来日。

楽しく話し合ったが、帰国後、以下のような新年のメールをくれた。

国際情勢としてみても、意味のある内容なので、転載させてもらおう。

ついでに遅れの返信を書いたので、それも併記。

 

大倉冨美雄 様
 
あけましておめでとうございます。
その後、イタリアに戻った後ご連絡もせず、失礼いたしました。
お会いする時間を作っていただき有難うございました。
(お会いできたのは3-4年ぶりだったでしょうか。)
 
あの後、平泉中尊寺、仙台、松島、新白河、大内宿、名古屋、飛騨高山 京都、成田と1週間レ-ルパスを使い、回りました。
東北地方の旅は初めてでした。
感じましたことは、自然環境、特に山々は、やはり関東、中部地方と異なり、落葉樹だと思いますが単一種の樹木の、隙間が無く密度があり生命力ある、モクモクとした茂りが印象的でした。木々が、まあ厳しい気候に団結しているような、と言えますか。
 
松島の名声は、言われるだけのことは有ると思いました。ベトナムの北、ハロン湾などに行きましたが、松島は世界的に見ても素晴らしい所と思います。
 
日本のオルガニゼ-ションの良さと技術力は大変な事と改めて感じました。
 
格差社会ですが、イタリアにおける日本の人気度は高いようです。旅行代理店の人と話す機会が有ったとき、今イタリアの若者に日本ブ-ムが有ると聞きました。
確かに行きかえりのアリタリアの機内でかなりのイタリア人を見ました。
 
新聞や雑誌に、時々日本関係の記事を見ます。地方での日本の伝統絵画や小物の展示の知らせや、日本人夫婦の活動とか、金継ぎなど教えるクラフト会、印象派と浮世絵の関係性の記事とかが紹介されています。
 
 
ミラノには中国人経営のすし屋は、わんさかあります。中華と和食(寿司、焼き鳥、タレを掛けた和食フ-ジョン)、中華とイタリアンのコンビネ-ションも多いです。
 
それにしましても長年の不況は若者に就職難をもたらし、やる気のある若者は外国に出て行く様子。
 
国内政治、今、内閣は何とか持っている感じで危うく、安定感はありません。与党連立のM5S(5星運動)とPD(民主党)で、主体の柱となるM5Sは、日本のかっての民主党の様で政治経験の無さから運営がぎこちなく、それが人々に苛立たしさを与えているように感じます。党内部でも分裂があるようで最近5-6人の党員追放や他党への移籍が起きています。
 
イタリア社会状況は騒がしく、現在国の外国からの債務2.500.000.000.000ユーロ、利子の払いが膨大との事です。もう30年ほど、かってのEECやEUから是正を勧告されても、常に増え続きで形無し。
インフラへの投資が不足し道路や高架も老朽化。トンネルの老朽化では先ごろ、又もやジェノバの近く高速道路のトンネル内で、惨事にはなりませんでしたが天井からモルタルの塊りが落ち問題になっています。
又、公共事業や公的機関がマフィアやカモッラに浸透、浸蝕されているようです。(これらをM5Sは是正したいが)景気は長く悪く、若者の就職難、コカインの蔓延、多くの中小企業の倒産破産、そして多くの移民の流入、銀行の縮小等々があり、オピニオンが右翼に行く状況があります。
でも私は、イタリアは必ずや再生すると思いますが、前途は多難です。
 
 
カルロス・ゴ-ンの日本逃亡はイタリアでも今日あたりからニュ-スに流れます。たぶん、日本は国の威信にかけても事件を追求するでしょう。西洋は人権問題も言い出すでしょうね、それに対応しなければならないでしょう。検察の対外広報も必要になりますね。
 
深澤正篤

 

深澤さん
 
返信が遅れて申し訳ない。
まもなく、「現代社会における設計行為と法規制ーイタリアン・セオリ-から考える―」というフォーラムが行われ、東大名誉教授の司会で僕も何か語らねばならず、その準備もあり、その他、もろもろあって、いつも時間に追われています。
特にイタリアン・セオリーは、京大の岡田温史という先生が付けた名前で、ネグリアガンベンエスポジトという在米のイタリア人哲学者の言動を扱っています。聞いたことのない人たちだったけれど、これを日本人にわかるように解釈し直すのが、僕の仕事となりそうです。
 
来てくれた時は、嬉しかったです。元気な姿も見られて・・・。
君の報告書(?)を読んで、トータルに(政治・経済・社会・文化)把握していると思い、改めて、ミラノに居て、よく観察していて、こんなコミュニケーションが出来るのは、そんなに例がなく素晴らしい、と思いました。
このままではもったいないね。ミラノと東京での繋がりを活かして何か出来ないだろうか?と考え始めました。
建築家仲間で、最近自分の絵をミラノで個展にした男もいます。
すぐにという訳ではないが、何かミラノだからこそ求められているもの、出来ることがあるんじゃないだろうか。
 
今日から中国の正月、そこへ得体の知れない病気が蔓延した所から、たくさんの観光客が来るということで、戦々恐々。家内も銀座への買い物をストップ。僕も3月中旬のカンボジア行がどうなるかと。
 
「風と共にゴーン」と、週刊誌や新聞では度々、論じられています。上記のフォーラムでも、これを話題にしてやろうと思っているのですが、根の深い問題を抱えていますね。
と、言うことで、とりあえず、近況報告です。
今年もよろしく、1/23 大倉。