時間は価格・「唯識」という思想

この前の記録に関係するが、面白い記事を2つ見つけた。

同じ週刊誌(週刊新潮2020/3/12号)にあった記事だが、1つは何かと話題の多い百田尚樹の「新相対性理論」(15回目)。

「前に、私たちは有限である『時間』を売って生活している、と書きました。生活するということは、他人の『時間』を買うという行為でもあります」との書き出しで、食べるものを考えても、農家の人たちが自分の時間を使ってこしらえたものを買って生活しているのだ、という仕組みを解説してくれた。そこでヴァスコ・ダ・ガマがインド洋航路を発見した例を挙げ、シルク・ロード経由で高価だった胡椒を安く手に入れるためだった、という。そのために彼らは自らの「時間」を投資した。「それはひとえに投資した時間の何倍もの時間が買えるという目論見があったから」だ、と。

もう一つは、「佐藤優の頂上対決」(第23回)で、興福寺寺務老院の多川俊映師との対談である。佐藤が東京拘置所に拘留されていた時に、何度も読んだという同師の「唯識入門」の内容について、語り合っている。具体的な話は長くなるので省略するが、「人間の心は『八識』という八つの層から生まれてくる」という唯識の話と、佐藤の言う「キリスト教は、現世で永遠に生きるものを嫌います」という処から、東洋思想との根本的な落差の話は、週刊誌にしては(笑)珍しく面白かった。