久し振りに「第9」を褒める

最近は年末になると、やたらと「第9」が演奏、合唱される。

何年か前だったか、有名楽団、有名指揮者を演奏会で聴いたことがあるが、思いの外、感じなかった。

昨夜、2020年12月20日だが、NHKBSプレミアム3でのロンドン交響楽団、指揮サイモン・ラトル、合唱指揮サイモン・ハルシ―の「第9」は思いもかけず、とても良かった(プレミアム・シアター23:00~)。

今年の2月16日の演奏会だったとのことで、コロナ拡大直前のぎりぎり。息子の結婚披露宴のことも併せて、今、思うと、凄いことだったのだなと思わずにはいられない。

英国人がやる「第9」はあまり信用していなかった。「第9」はやはりドイツか、せいぜいオーストリアかと思っていたのだ。ヒトラーがイギリスを攻撃したことを思い出しても、イギリス人がドイツ語で歌うのは想像しがたい。

一方最近、というよりこの数年、家内が嵌っている「ミス・マープル」や「ルイス警部」などのイギリス番組を、ついつい見てしまうが、自分の第2の故郷と思っているイタリアとは又違っていて、とても我々の心性に馴染んで来るものがある。

漱石もそうだが、明治はイギリスからも多くを学んでいる。

更に余談を加えれば、日経新聞が英国のフィナンシャル・タイムズ(FT)とパートナー・シップを組んで5年になるそうだ(12月16日同紙記事)が、この日経の記事で最近、比較的に読んで了解しているのがFTの記事だということも付け加えておこう。

こう見ると、イギリス、フランス、ドイツ、それにイタリアは日本人に取って、それぞれ微妙に違う国柄ながら、我々の精神や感性の形成にかなりの役割を果たしてきたのは間違いない。そのつながりを意識すれば、イギリス人がドイツ語で歌っていても、そんなにおかしいことではないのだろう。

サイモン・ラトルも、自分も歌いながら夢中で指揮していたし、音響も合唱も申し分なくて久しぶりに感動した。