今夜の「カンブリア宮殿」その2

今夜の「カンブリア宮殿」その2

The difference between selling furniture as a business, and designing furniture as a creation.
(from TV interview with Mr. Nitori, CEO of the biggest funiture company in Japan)




早いものだ。「今夜の『カンブリア宮殿』」を書いたと思ったら、もう一週間経ってしまった。


今夜は二トリの社長、似鳥昭雄氏が対象。
家具屋と家具産業は身近な存在なので放っておけない。


日本一の年商を誇る家具会社。大塚家具の2倍くらい。データは後にして、家具を値段で勝負する考え方の雄であるこの会社は、なかなか興味深い。
社長は、いかにも家具屋の親父上がりの好好爺イメージで、われわれを安心させる。
しかし、大変な苦労をしてきたに違いない。


出演中、似鳥社長からも側近からも、村上龍からもサポート役の小池栄子からも、一度も「デザイン」という言葉は出て来なかった。
一方、「競合リサーチャー」という戦略部所の紹介があり、徹底的に他社商品を調べ、分析するという。ミラノ・サロンなどで見る外国商品は、写真を撮る訳にも行かないから、出来るだけカタログを取りよせ分析するとも言う。
要するに、デザインやクリエイティビティには関心が無いということだ。


「顧客あっての商売」観は徹底していて、その鍵を一般価格の半値にすることに置いている。
社内的には、「年収800万以上の収入のある方は、どうぞ他社の高級家具をお求め下さい」というセールス・トークが公認されているようだ。
現在は家具製作は東南アジアに任せ、現地では切り残しの不使用材も家具内の補強材とするなどして捨てないで活用する。


このような商売のやりかたこそが現在の日本を示している。このような商売のやり方こそが分かりやすく、この国では説得力を持つ。
知る限り、この国では、このようなやり方でカネを動かす事が出来なければ、新しい事も出来ないし、人も動かない。
そのことは、手に取るように良く判かる。


しかし、判ってても今の僕にはもう出来ない。いや、今の視野、今のバランス感覚で30才だったらば、何か出来るかも知れない。

但し二トリにして見れば、これ以上の変な欲を出してはいけないのだろう。
似鳥社長が、デザインだの、歴史に残る家具を創りたいなどと言い始めたら、途端に事業は傾くのかも知れない。

つまり、家具のデザインすることと、家具をビジネスとして大きく売ることとは、むしろまったく関係が無い、と首をくくっておいた方がよさそうだ。


30才だったら何か出来た、とは言え、モチベーションが経済的利益ではなく、得体の知れない創造的自己実現である以上、事業として成功したかどうかは疑わしい。成功すればするほど、あるいは失敗すればするほど、自分が見失われるようで不満は増大していたのかも知れない。


それにしても、デザインを大切にしてくれているいくつかの国内家具メーカーのことを考えると、沈痛な気持ちになる。デザインとオリジナリティから、敢えて高い家具を買ってくれる購買層が拡大してくれればいいのに、と願わざるを得ない。