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「日本人には昼と夜がある、とは、正確に言えるかどうかは別にして、感覚的に言って、実感できるんだ」
真吾は、あちこちでそう言ってきたし、宮間ともそういう話で打ち解けてきた。
所用で喫茶店で打ち合わせた後、二人はしばし、雑談に入っていた。
「昼はいわばドイツ人としての日本人、夜はイタリア人としての日本人というわけ。昼間は約束事に振り回されて機械のように動く。夜になると緊張が解けて地が出る。それって、かなりイタリア人の気持ちと近くなるんじゃないかな。日本人は仕事は夜型でやっちゃいけない、って信じているんだ」
「うん、どっかで聞いたことあるけどね。一緒にはなれないってわけか」と宮間。
「今では実際は、昼間からイタリア人っぽいのもいるけどね。若い連中のことだよ。」
「それはそうだろう。俺だってどちらかといえばそっちだ」
「多分、今は過渡期なんだろうな。気持ちに素直になれば、何でそうするの?ということがあまりに多すぎるじゃない。その素直な気持ちが無くなっちゃった、伸びきったゴムみたいな大人が多すぎる、ってことだろうな。それで、そういう大人、ったって僕らの周りのことだけどね、そいつらがこの社会をカチン、カチンにしてきたってことだろうな」
「案外、そうとも言えないんじゃない? 役所も、かなりの若手でも進んで条例なんかを仕切っているとも聞いたけどね」
「それは、日本人全体が正確で細かいことはいいことだと思っているからだよ。そういえば、どういうわけか、紙に書いたものばかりが異常に信頼される」

真吾はそこで、はたと気がついた。この間、仲間と話していたら、これと似た状況があって、一人がそういうのを言いくるめるのに、「記述式」という言葉を使ったことを。
「そうだ、この国は記述式国家なんだ!」
素っ頓狂な真吾の声に宮間は笑い出した。
「何でも紙で来る。役所の通達、会社での報告書、契約書に請求書、まあそれはいいとして、今度の建築基準法の改定なんか、まさしく記述式の上塗り行為だね」
「確かに、精度を求めるあまり、記述の上にまた隙間があれば埋める、ということの繰り返しをやっているように見える。細かくしていけば安心というわけなんだな」
「だけどさ、建築家のほとんどが、黙っているよね」
「それが、今でもお上の命令には逆らえない国民だからだよ」





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ブログの中に、志向の違った路線を展開してもいいのだろうか。
「あるストーリー」を始めてから、悩み始めたことだ。


たとえば、このブログの小説仕立てを読めば、この人はちゃんと設計できるんだろうか、と思う人も出てくるかも知れない。あるいは本業の仕事が無くてこんなこと書いているんだ、と取る人もいるだろう。


もしかすると、続けるなら、S(何らかのストーリー)、AR(雑情報)とは別に、T(設計技術や建て主への情報提供)の欄が必要なのかも知れない。


案ずるより生むが易しで、とりあえず、Tも意図的に加えておくこととする。


ブログ自体を3本立てにするべきなのかどうかは判らない。
判っているのは、仮名(ペンネーム)で書いて使い分けるほど器用でない上に、面倒くさい、ということだ。それに、逆説的に、こうやって一緒くたにするところが新しいじゃん?と思いたい、ということもある。