AR1 S5

AR1

●部分、5月26日、追記があります。
●●部分、5月31日、追記あり


以下は、この度、(社)日本建築家協会(JIA)のデザイン部会(関東甲信越支部)を任せられてしまったことからの企画予告です。日程、場所とテーマ内容だけは決めてしまいましたが、他はまだ案です。参考までに掲示しておきます。



JIAデザイン部会 討論会のお知らせ
近隣分野とのコラボレーション
新創業デザインへ――シリーズ① (3回予定)


デザイン業は全体として見ると、ある意味で建築、造園、工業製品、サインなどから成るミックス業です。
ところが建築から見ると、建築家がすべてを切り盛りできるかのように、周辺分野を眺めて来はしなかったでしょうか。●またインダストリアルデザイナーは産業構造の中で振り回されすぎては来なかったでしょうか。
今、デザインの位置が大きく変わりつつあります。この大不況をが終息する時、社会の景色はすっかり変わっている可能性があります。
そこで以上の観点から、近隣分野とのコラボレーションが如何に必要になり、如何に行うべきか、また如何に行政、民間に公知すべきか、が課題になります。
これが今回、そして今年度のテーマです。
そこにデザインと建築の新しい職業概念も生れそうです。

講師に、建築●とインダストリアルデザインの論客をお招きして、この問題を論じます。
多数のご参加をお待ちしています。●●(デザイン部会長:大倉冨美雄)

パネラー
●●建築家:古市徹雄、千葉工業大学教授、海外での経験豊富な建築家、地球環境と建築デザインにおける活動を展開中
プロダクトデザイナー:浅井治彦、明星大学教授、(社)日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)環境委員会委員長として活動。12月には新宿OZONEにてエコ展開催


日時: 7月3日(金)午後6時半〜8時半。8時45分から近くの中華料理店で懇親会
場所: 日本建築家協会 JIA館1F建築家クラブ(渋谷区神宮前2−3−18)
会費:1000円(学生500円)飲食物代等
申込: (住所、メルアドなどを明記してもらう仕組みへ)      (地図)

JIA会員用CPD:
次回以降予定: ②10月初旬「新しい職種を創る」③12月初旬「意識とルール」

主催:(社)日本建築家協会(JIA)デザイン部会(関東甲信越支部
協賛:NPO日本デザイン協会 





S5


真吾にもたくさん、悩みがあった。
その一つが息子のことだった。
真吾の父は、庶民の立志伝に値するような努力の人で、朝早くから会社に出かけ、遅くまで帰らなかった。よくある会社人間の最たる例で、高校になっても真吾は父親の職業がよくわからなかった。良く言えば自由放任で、このおかげで真吾は好き勝手な方向を選ぶことが出来たともいえる。もっとも父親にしてみれば建築やデザインなどといっても、何のことやらさっぱり判らなかったのは明らかだったから口を挟む余地もなかったのだけれど。
このことが子に伝播してというのか、真吾は自分の職業の選択権は子供本人にあると信じて疑わなかった。その結果、息子は自分の体験の流れの中から、真吾とは似ても似つかぬ音楽畑に入っていった。それでもなお、大学時代は好きなことを思い切りやってよいとの思いから、それに、行き詰まれば親の職業にも目を向けるに違いないとの希望的観測から、真吾は放任し続けた。
しかし、留年までした大学を出る時になって、就職をしないと言い出したのだ。つまり、あまり意識していなかったフリーターになるというのだ。

ここで真吾は、遅まきながら気がついた。
なぜフリーターが社会問題になるのか。それは自分のやりたいように生きたい若者の就業のシステムがこの国には、まだ出来ていなかったのだ。つまり、現状ではやはり、出来るだけ大きな企業に就職しない限り、人生の大まかな安定の保証が無いのだ。


何ということだ。この落差を息子に認識させるより先に、生活がどんどん不安定になる真吾自身の「職業」を見ていれば、指針指導力の失墜は明らかで、親父の言うことなど聞く耳を持たなくなってしまったのは当然だった。
当然、このことは、本人はもとより、妻との間に大きな家庭争議となる。

妻の弘子は、事あるごとに、息子の将来をコントロール出来なかった真吾の判断をなじった。
「こうなったのは、あなたのせいよ」
事あるごと、というのは、例えば夜中の二時、三時という時間に、いい年をしてゲームソフトにはまって遊び呆けているのを弘子が見つけた時などだ。
ちゃんと大学を出て、早く自活の道を見つけて欲しい弘子にしてみれば、息子に当たる以上に真吾の失敗が悔しいのだった。