北京日夜話
【情報・論】
遅くて笑われそうですが、今頃、北京へ都市・建築視察に行ってきました。
●は後日追記。
まだ眠気が残るので、この記事もしばらく書いて続きは後で、と、なりそうですが。
すでに知られたことですが、観光気分で「なるほど(凄い)」と言えそうなことは、とりあえず以下の5つ。
1・ここ二十年あまりの間に建てられたと思われる、ピカピカの20〜40階建のビル、マンションの数と、これでもか、という外観意匠と建物看板。ガラスのカーテン・ウォールか、煉瓦タイル、石の壁。どんどんやっちゃうバイタリティ。
2・人の多さと交通渋滞。信号無視あるいは軽視。
3・霞のようにかかるスモッグ。
4・車はモダン車であふれ、日本とそんなに変わらない道路景観。
5・外観的には全く資本主義国家に見える。カネ儲けのことを中心に考えてうごめいている人たちのようにも見える。
中国は今やっと先頭集団が、国際的な産業・文化の認知レベルと合ってきたように思われます。
時間もなく、限られた範囲ですが、この観点から、建築・地域文化・ファッションとしてのデザインなどで見た価値のあったものをいくつか記録(カタカナ読みは聞き覚え)しておきます。
1・「798芸術区」(チジパー・ユンシューグウ):芸術家は、家賃が高くなってしまったために、もうほとんどいないそうだが、小ギャラリー群が軒を連ねるアート地域。いい雰囲気になっている。ただし元工場群だったところだけに、このスモッグの中では工場街とイメージが払しょくしにくいのか、なにがしかの不安感がつきまとう。
2・「南鑼鼓巷」(ナンローグーシャン):最近、話題になってきたフートン地域開発。一戸、一戸と面白い店舗設計を狙って開発が進んでいるようだが、あくまで個人レベルのようにも見受けられた。これからが楽しみ。
3・「什刹海公園」(シチャハイ・ゴンギュアン):「前海」にある湖岸の回遊路周辺を言うと思うが、北側にある「后海」と併せて、昼と夜の景観が全く変わる盛り場。楽しそう。
4・新「三里屯(サンリトン)」:渋谷原宿的なところ。●付近に各国大使館が多いそうで、確かに若い欧米人を多数見かけた。ここで初めてパンツ姿の若い女性たちをみた(他の場所で見かけなかった、というより、ほとんど気の利いた女性を見なかったのは、午前中とかの時間のせいかもしれない)。隈研吾氏設計のホテルの地下はいい。●ただし自分は好きでも、ここのステンレス・プールで泳いでいて心が安らぐかと言われれば、NO。
5・「人民公社」:万里の長城昇り口から数キロ離れた所にある長期滞在を主眼としたモダン賃貸住宅群(ホテル経営)。指名コンペ形式で設計され、日本の建築家も何人か参加してアイデアを競いあった。遊びも含め、思い思いの設計内容で楽しい。入居者がいることもあり、ふつうはなかなか思い通りには見せてもらえないようだ。●確か、シャープのアクオスだかのコマーシャルにあった竹間仕切りの家(隈研吾)もここにある。「人民公社」とは、その時代の発注母体名がそのまま残っているからだとか。ホテルマンのカーキ色の服に小さい赤い星の胸バッジがとても強烈。「ここは共産国ですぞ」と言わんばかり。
6・「CBD」:中央商務区と呼ばれるモダン建築の巨大オフイスが立ち並ぶところ。最近の丸の内をもっと拡大したようなところ。あの入居できないCCTVも焼け跡ビルをのぞかせたまここにある。地元では作業ズボンとかのあだ名がついたとか。これでお分かりでしょう、あの二股に分かれて上層部でまがって繋がっている、総ガラス張りのかなり無茶なビルです。(設計OMA+ECADI+Arup)。OMAはレム・コールハースの事務所。彼は言っていることとやっていることが矛盾していると言われながら、それを哲学としてしまっている変人・狂人、巨人?
7・「当代MOMA万国城」:名前に意味はないようだが、スティーブン・ホール事務所の設計の9棟(各20階建てくらい)が上部でブリッジ連絡している超高級レジデンシャル区。特に渡り廊下(ブリッジ)まで上がって見せてもらったが、すこしもいいとは思わなかったが。ちょっとしたアイデアで造ってしまい、大胆と荒さが平気で共存しているような建物群。
8・「鳥の巣」「水立方」「まんじゅう(国家大劇場院)」「中国映画博物館」「首都博物館新館」: 言わずと知れたオリンピック施設群。「水立方」は仮設的な構造が欠陥を表わし始め、もう危ない(PTVアーキテクツ設計)。「まんじゅう(地元での言われ方)」はつまらない(ポール・アンドリュー設計)。「鳥の巣」は感激だが、ここまでカネを掛けられればとの印象もある。20ミリ厚ほどの鉄板で造ったらしい空洞角コラムとRC角柱(それらのほとんどが斜柱)の断面寸法を合わせて(モデュール化か)混用している。塗装を合わせているので外観上は分かりにくい。とにかく21世紀初頭の傑作と言える。中国側の担当部署とのカネの戦いが凄かったらしいが、記録映画ではその片鱗しかわからない。(ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)。「中国映画博物館」は複雑すぎる内部展示空間だが、国威高揚のために中国政府が映画をいかに大切にし、利用しようとしたかがわかる。外観は古くなったモダニズムといったところ。(RTKL+北京建築設計研究院設計)。「首都博物館新館」は、わかりやすいコンセプトとプランだが、その分、面白みに欠ける(杜地陽DUDIYANG設計)。
9・WSP設計事務所の見学。こんなに勝手気ままな中国設計業界にあって、極めてまじめな設計思想を持っていて感激。いい仕事をしているようだ。
きりがないのでこの辺で終わりとします。現地で働く日本人建築家とも話し合い、収穫の多い旅でした。