「発明協会」の表彰式

【情報】


建築家やデザイナーには、あまり知られていないけれど…



常陸宮様と同夫人臨席のもとで、盛大な「発明協会」の表彰式が始まった。
といっても、何のことかわからない人も多いのでは。


このブログでも、以前にどこかで書いたかも知れないが、そもそも「発明協会」とは、国が推薦する発明奨励運動を行ってきた、75年あまりの歴史を有する日本では伝統のある古い社団法人のことである。常陸宮はここの総裁だ。


何と10年以上前になるだろうが、この表彰制度に「意匠」部門が加わり、一審査委員を経て、現在私が意匠部門審査部会長。常陸宮殿下、同妃殿下にご挨拶している。
審査委員職をおおっぴらに公表すべきではないのだろうが、広報役もなければならず、痛しかゆしの立場にある。


日本を代表する発明の奨励であるだけに相当専門的で質が高く、その流れから、応募の受賞者は大企業の技術者集団である場合が多い。
技術部門の内容は電気、機械、化学とわかれていて、審査に立ちあってもデザイナー・建築家の立場では、相当理解に苦しむ。下地勉強が必要だ。


例えば常陸宮様が直々に賞状を手渡しされた今年の「恩賜発明賞」は、「CO2ヒートポンプ式給湯システムの発明」(特許第3227661号)というもの。
最近出来た「21世紀発明賞」という第2表彰区分では、「自然で見やすい3Dディスプレイの発明」というように、なまじの技術理解ではついていけないタイトルと内容。
前者は、(株)デンソー東京電力(株)、(財)電力中央研究所の3組織が協働開発したもので、デンソー社員4名、東電社員2名、中央研究所職員1名、計7名が実務で受賞し、彼ら社員の所属する企業は別に「実施功績賞」を授かる。このため、ほとんどが社長直々の出席だ。
後者は(株)東芝のマルチメディアラボラトリーの若い女性の主任研究員ら3人、そして佐々木則夫東芝社長の出席。


そういうわけで、ホテルの表彰式会場は一時、日本の産業界VIPと優秀技術者で埋め尽くされることになる。(他に特別賞9件35名、発明賞12件35名、などなど)
「意匠」は、受賞されれば別枠でなく、恩賜発明賞、特別賞、発明賞に振り当てられる。
意匠の審査員は10名ほどいて、そのうちデザイナーと言える人たちはほとんどが大学教授以上で日本デザイン学会の役職者といった按配だ。


今年は特別賞(日本弁護士会会長賞)に、トヨタの「マイクロプレミアムカーの意匠」(商品名「iQ」)を推薦、採択された。この車は日本では、サイズ的に軽自動車の範躊なのに高価なため売れず、もっぱらヨーロッパ市場での人気という。
ついでに発明賞を得た「意匠」部門を記しておくと、

超短投写フロントプロジェクターの意匠(意匠第1323224号:日立製作所
カメラ融合型無線式携帯端末の意匠(意匠第1365666号:ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズ)
全身用X線CT診断装置の意匠(意匠第1325882号:東芝


日本の大手企業は頑張っている。そして、それだけに問題を抱えているのだ。