この男も空気感の表現に目覚めていたか

【論】

明治初期に、早々と直感的にホイッスラー型の「自然の美」を身につけていた版画家がいたのか


小林清親のこと


知ってはいたが、今夜のテレビ番組(「美の巨人」)で紹介されるまで、小林清親(きよちか)のことは意識の外にあった。それは明治初期の東京の都市風景の紹介絵はがき作家として理解していたこともある。
ホイッスラーから類推してきた日本画壇のこと(去る2月8日、13日の本ブログ)に立ち入っていたので、この視点から急きょ追記しておく必要を感じている。
とは言っても、調べ研究したわけではないから、当面はメモ書きの類だ。


1847年生まれで、1915年に68才で亡くなった。
ホイッスラーの話で、ひとつのマークとした1860年でみると13才。21才で明治維新だった。末期の江戸に生まれたわけだから、明らかに輸入文化の情報は得ていただろうし、開国の激動も目の当たりにしていた。
30才辺りまで、新しい明治の風景をたくさん木版画にしているが、これらがすべて洋式の遠近法を体得しているところが興味深い。
それより何より惹かれるのが、ホイッスラーが目指した自分の内面感性に素直な画面構成でさえも生得しているかのような作品が少なからずあることだ。それは、月夜や闇、朝焼けや夕焼けのような気象変動への感受性がはっきり現れた作品にある。それは薄暗い天空を刷っている画面に特にはっきり表れているようだ。本人のスケッチブックも紹介されたが、案の定、四季折々の空模様がたくさん水彩画で記録されている。これが意外といい。
清親はどこかで、ホイッスラーの絵はがきのようなものでも見ていたのではないか、という気がする。
1890年ころ我が国に紹介されたと記述したが、すると43才になっている。紹介とは、当時のマスコミに乗ったということで、情報としてはずっと前にあったとみるべきか。


(今は、確か静岡で開催中。4月5日から5月7日まで練馬区立美術館に来る)