「六本木ミッドタウン」

「六本木ミッド・タウン」                      


昨日、明日からグランド・オープンする「六本木ミッド・タウン」を見学した。
「デザイン・ハブ」でのセミナーを聞き、「21−21デザイン・サイト」へ廻ってきた。

まず、全体の印象。
六本木ヒルズ」が若者向けを謳っていたに対してこちらは熟年(?)向け。建築としてのアクロバティックなところは無くおとなしい。内装はもっと平凡。
鉄骨構造の大屋根も、特に感心するほどのことはない。全体にコストパフォーマンスのよい建物群になっているのではないだろうか。それだけに「なーんだ」という感じも否定出来ない。
むしろ、一番感じた事はその規模である。相当数の店舗、スーパー、複合施設、企業が入ったようで、これで一つの街になっている。比較的シンプルな平面計画だが、それでも一回行っただけでは迷いそう。比較的に天井が高いのも、空間のゆとりを感じさている。
「デザイン・ハブ」を主催し、世界のデザイン情報の中心に立とう、という日本産業デザイン振興会(JIDPO)や日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の入っている建物の5階フロアから見降ろすと、桧町公園だったところには、学生の卒業制作にありそうな、瓢箪風の池にせり出したあずまや風の和風建物が出来ていた。何に使うのかは知らない。
デザイン・サイトの方へメインの建物から行くのには、太鼓橋状の小さいブリッジを渡る。ここからのアプローチが十分すぎるほどの空地になっていて、植えられていた桜が満開で夜目にきれいだった。
例のウイング風の建物は、このコンプレックス・ビル群を見た後ではとても小さく見えた。

デザイナーとしてみれば、デザイン・オリエンテッドな施設が増えるのは大歓迎だ。後は、いかに上質なソフトとパフォーマンスを提供できるかにつきる。しかしその運営者たちに、デザインの本質的な判断力や選択眼が備わっているのかどうかは、JIDPOのセミナー講師(IIT教授)の話を聞いた後でも、いや、だからこそかもしれないが、とても心配な部分である。


この完成で、六本木ヒルズとの協奏が課題になるだろう。ミッド・タウンからの距離が直線で600mあまりしかない。国立新美術館までが400m、これまで一人、この地区で気を吐いてきたAXSIS(飯倉片町交差点近く)まででも750m程度しかない(ちなみに、私が理事長をしていた日本インダストリアルデザイナー協会JIDAはここにある)。約1キロ下る覚悟があれば、サントリー・ホールも圏内だ。これらのニューブリード複合施設が連携すると、この界隈は世界最先端の文化的商業地域の一つにもなるだろう。その意味で中心になる地下鉄六本木交差点付近のリニューアルもまた課題となろう。
しかし、本当に新しい街を創れるのか。ここにあるのは界隈の混沌だ。このままではニュー・上海に向かいそうだ。

近々、発行されるミシュランの日本ガイドによると、六本木ヒルズは東京でも三ツ星にランクされたようだ。六本木は、また新しい都市イメージの可能性への出発点に立った。我々に、行政を巻き込んだロングスパンの街づくりを任せてもらえたらと切に思う。