*日本のこれからと個人

*日本のこれからと個人

(Japan from today and my situation)                                   



フランク・ロイド・ライトが日本で建てることが出来た数少ない建築に「自由学園」がある。
写真では知っていたが、見ていなかった。もっとも、池袋の駅近くなんて思っても見なかったからだ。
過日、ここで久々に「新日本様式」協議会のセミナーがあった。
講師の玉重佐知子さんとエバレット・ブラウンさんの話が、このライトの空間(正確には、セミナー会場の講堂は弟子の遠藤新の設計)とマッチして、変に自分の問題に収斂してしまい思わず発言してしまったが、いろいろと思いが錯綜して、とても充実した時間を過ごせた。事務局の皆さん、有難うございます。
中休みに外へ出たら雨模様。
ライトの平屋木造住宅がこの雨の中にたたずむ姿は、とてもぴったりで、大正時代にでもいるような心休まる懐かしさに浸れた。
ライトは小男だったとは、建築家仲間が教えてくれたが、この学園もこじんまりしていて、とても日本人のスケール感に合っている。細い木造の、斜め窓枠建具がライトのライトたる由縁を示していた。


さて、もう僕の周辺状況をある程度知っている人には恒例のテーマだが、玉重さんは、ちょうど僕が大学で講義していたのと違わぬような話で、今頃になって知り合う関係かと思うほど、似通っていた。違うのは彼女がロンドンで活動してきたのに対し、僕がミラノだったということくらいか。
でも彼女はイギリスに居たからこそ、デザインを軸とした経済復興を目の当たりにし、その工業力の遠因にある産業革命も体感できたようだ。彼女が日本のデザイン力にも注意を向けているのはうれしい事だ。
僕が投げた問題は「文化力を、経済界やメディアで認知させるための政策提案のありかたは何か」という問題だ。


在日何十年とかの、もう一人の講師ブラウンさんは、僕の質問に対してシャープな返事を呉れた。外から見た日本人という視点を、日本人として自己体内化したような人で、写真を切り口にとても新鮮な語り手であった。

自分の体験から言っても、政界や経済界に絡み、発言し行動して行くよりは、自分の身近にある問題を注視し、その連携を探るべきだという主旨だったと思う。
現実に、政財界のお歴々ともいろいろ交流があるらしいプレゼンテーションを見た後では、妙に現実味のある意見に聞こえた。
事実、自分のやっていることの紹介の中でも、千葉で(自宅で?)米つくりを始めていて、2〜3年になるとのこと。田植えや収穫の時期には100人以上の参加者があるそうだ。
僕自身が畑仕事をするとは当面考えられないが、自然、エコロジー、自給自足、食の安全など考えて見ると、大地に近い所で草の根運動が出来ることは、今後の人間活動に取って重要な指針を提供しているのだろうとの予測はつく。


金と利権にまつわる醜い争いに巻き困れている現代人に、休息と生きる喜びを与える職業なり、行動の指針なりを与える問題はますます火急の事となってきた。
自分の能力を踏まえて、僕に何が、どこまで出来るのだろう。可能性と限界の間で揺らいでいる毎日である。