韓国工業デザイン協会(KAID)の提案について

KAID提案のアジア・デザイン・アワード(ADA)構想についての日本側(JIDA)の考え方

What we, JIDA think about Asia Design Awards.




難しい話かもしれないが、代理でソウルで議論して来た当方発言の趣旨のうち、一般性のある部分を以下に転記しておく。


  
私たちはADA(Asia Design Award)の設立主意には共感している。
特に欧米との比較において、アジア独自のプレゼンスが必要という認識では一致していると言えよう。


但し、次の点については整理と理念の構築が必要であると考えている。


1・同じような名前、運動との区別、差別化が必要。


2・プロポーザルの随所にある、「successful business」「successful industry」という用語の意味が明らかでなく、言い方に問題を感じる。
もとより、応募者(Candidates for nomination)の評価方法として、
[Design with the best reflection of the cultural characteristics of Asia](アジアの文化的特性を最も良く表わしているデザイン)
[Creative Design that have potential for international recognition](国際的認知を得るポテンシャルを持った創造的デザイン)
という指摘があり、これはもっともであるが、
[Distinguished design or service appropriate to represent Asia]における「アジアを表わすのに適切」という言葉に問題が集約されていると考える。


日本においては既に、量的生産力、マーケット・シェアの優位などだけで、「successful business」「successful industry」とは言い得ない状態になっている。売り上げや販売量で企業の優劣を決めることはもはや、日本では難しい。
有力企業は、地球環境問題に正面から取り組んでいることを生活者に訴えねばならず、商品の安全性、老人にも、精神的にも優しい生活環境、地域活性化、地域文化への貢献などが出来る要素も大きく考量され始めている。
今後、地球環境問題にあっても先進企業は、「ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー、材料の分野で、人口65億人強を有する地球人への不可避な取り組み」をして行かねばならない。
特にデザイン団体は、情報化がもたらした大変革期をはっきり承知して、市場の実績より、予感と方向性への先導役の立場から、これらの点に先回り手を打って行かねばならない。


アジアブランドの標榜は、この辺で、一般的な意味での「successful business」「successful industry」という言い方でなく、欧米に先駆けて、環境と地域文化、そして人間に貢献する視点を強く打ち出す必要があろう。
そこで、各国のエスターブリッシュの認識事情の差を審査にどう取り組むかという問題も生じてくる。それは産業の近代化、工業化の意味を問うことでもある。
そう考えると、審査、人選、公募方法、評価方法、さらには言語ギャップなどの調整も問題となって来よう。
このような視点からの理念化を踏まえて、初めてアジア版デザイン・アワードの創設の意味があろう。


補足すると、JIDAのある理事は次のようにもコメントしている。
「物事をどう認識するかが始まりだ。
デザインは環境(社会情勢とその土地の風土)の産物。
人が創ったものを人が評価するには、基準が明確でなければ反対だ。
(結果的に)欧米型のアワードを、欧米に習って創っていこうという発想は疑問。
生活の幸福を希求するのがデザインなら、また文化面もデザインなら、アジアとは何かを含め、ゆっくりと考え方の根本の基準、仕組みを議論すべきだ」


JIDAは2010に向けて同じような問題に取り組んでいる。このような検討も互いの共通のツールとなればよいと考えている。(文責:大倉)