T2  窓と換気のこと

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窓と換気のこと



日本の家屋が「夏を宗とすべし」と言い伝えられて来たことにはそれだけの理由がある。
冬、寒いという苦情以上に、換気が人心の問題にあったことを意味している。


現在、この換気の問題が、住宅やオフイスの高気密化によって、結果的に機械換気に取って代わられているところに大きな問題が生じている。
機械換気とは、ファン(扇風機状の風送り機能を持つ装置一般をいう)によってダクト(送風用のパイプ)を使って、機械的に空気を入れ、あるいは出す空気循環装置のことである。
簡単に言えば、それは自然力を活用しないことによって、エコとコストに逆らうことになる。最近のある種の住宅でのこの機械換気の導入は、その性能の最大効果と最少エネルギーの引き算が最大になるように計画されているのか疑わしい気がする。
それは窓やテラスの設計段階ですでに表れてくる。


最初に窓は、それが社会と家族的なプライバシーとをつなげ、あるいは遮る役目として抽象的に出てくる。次に居住者にとっての窓からの眺めの良さ、いわゆるシーニック・ビューティ(景観美)が問題となり、あとからそれが建物の外観に与える影響として発露されてくる。
この辺りまでは能力のある建築家なら、ほとんど同時に問題を意識して、窓の位置を想定し始める。
問題は換気と採光である。
採光のことはしばらく置くとして、換気のことは意外と放置されていると僕は見ている。
その理由は、前述の機械換気頼りにあるからだ。
建築家の方も、ガラスの全面テラス窓、しかもフィックス(固定)などをやりたがることによってこの問題を引き寄せているが、建主の方にも、「外から見られる」ということを被害的に考えている場合があり、そうなると、一段と壁が望まれたりする。ただでさえ、都会では三方、お隣の壁ということも多く、簡単に考えれば窓なんて付かない家も多いのではないかと思う。
更に、近隣からの騒音、臭気など厳しい条件が付いて回るところもあろう。


しかしそこが問題で、それらの悪条件を振り分けても、住宅なら、あるいはオフイス、店舗でも、できるだけ自然換気を取り入れることを優先的な設計条件に考えるべきだと思っている。風の道は、地域、風土、季節に密着して条件が変わるだけに、パターン(類型)の設計などでは追いつかない複雑な問題解決が待たれているといえる。