BIMの実体

真近かなBIMの実体評価


BIM(Building  Information Modeling)という概念が、やっと統一化され共有され始めたように見える。


この考え方はアメリカ直輸入としても、いずれ日本でも消化しなければならないものだった。
BIMとは、コンピューターの性能アップによって、建築に関わるあらゆるデータを駆使して、合理的な最適解を見つけてクライアントと設計と施工の間の溝を埋めようとするものだと考えている。


昨日、この関連の大きなイベントがあった。(Archifuture2009:テーマは「再構築される、ボーダレス時代の建築領域―求められるコンピューテーションの新しい力―」)

参加してみて、このシステムにある程度の仕上げが出来るところに来ていることが見てとれた。
ゼネコンを中心にした開発プロジェクトチームを作り、「ある既存団地の建て替え」というテーマに沿って決められた時間の中でBIMらしい解決を提示してゆく、というコンペ形式のイベントはなかなか面白かった。当然、目に見えるクライアント、予算、日程、現場の厳しいフィードバックはないわけだから、所詮、遊びなのだが、さすがにゼネコン。それぞれはなかなか興味深い解決、提案をしていた。


以下に、コンピューターが変える設計環境についてすこし感想を述べる。


BIMは、当面、一企業内でまとめようとすると、大組織でなければとてもやれない。このコンペでも、1グループは30〜60人位のコラボレーションになっていた。しかしその効果は絶大だろう。
ここで、BIMが進展するとどうなるかを、昨年の2月9日の当ブログで紹介した、山口隆文氏の、現状をどうしたらいいかという提案を改めてとりあげて、自分なりに考えてみる。(2008/02/07朝日新聞朝刊「私の視点」)●印がその考え。


1・設計と施工(つまり設計事務所と工事業者やデヴェロッパー)を分離して、建築を頼む人は設計者(事務所)と直接契約すること。
●まず設計を、基本設計より以前の企画設計のような分野まで設定し、そこまでさかのぼる位の位置づけも含むものとして敢えて実施設計以前までとする。あるいは、実施設計にBIMで得られる施工や現場までの成果データのフィードバックが、しかるべきセンターなどから得られる、という条件をつけておかないと、この提案は、行政改革面とは別の意味で難しい。小設計事務所にはトータルデータをまとめる力はないからだ。あるいはBIMソフトなるものが出来上がって、それを廉価で利用できるようなシステムが出来上がるかだ。

2・設計料、工事監理料を設計事務所の明確な「経理に位置づけること」。
●これは当然のこと。BIMとは別に考えられる、行政改革面の問題だ。
菅副総理、前原国土交通大臣、馬淵副大臣がいるので、今後のこの面の改革は可能性がある。

3・「工事監理者の法的位置を強化し、工事中止など強い権限を与えること」
●BIMの成果で、この問題は大幅に収束してゆくだろう。ただし前述のように、小設計事務所の能力救済を視野に入れなければ、片手落ちになる。


これでわかるようにBIMの進展は、法改正面も含めて抜本的に改革しなければならない大波になるように感じている。

当面12月4日(金)に予定している、JIAデザイン部会「新創業デザイン」シリーズの最後(今年度として)では、コラボレーションの展開から、分業のありかたを問題とし、このことを主題としてゆく予定だ。