柏木博さんのトークを聞く

【論】


デザイン評論家、柏木博さんのトークを聞く



武蔵野美大教授の柏木さんと知りあってからは、かなり長い年月が経っている。その間、会えば遠慮会釈なく思ったことを言ってきた。しかし、深く意見を戦わせたことはない。
そんな関係でも、ここ数年会っていないこと、社会的な激変が進んでいることを思えば、何か、人間も変っているんじゃないか、と勝手な思いが生じやすい。


聞き終って見れば、やはり、実に柏木さんらしい。それは当たり前。人間がそんなに変わるものではない(もっとも、最近の政治家を見ていると、少なからぬ人が、あれれ、あれれという感じだが)。


話の内容を紹介するのは止めよう。
結論としては、いいことを言っているし、間違ってもいないので、これからは、人間誰でも持っている本人の思考の限界を越えたところでの議論や行動の協同作業について論じるほうがいいということだ。


その差異のベースは、この場合、彼が自称しているように「デザイン評論家」であることにある。
彼が言っていることは「(視覚やしつらえ、しぐさなどに信を置く)知識と、その論理化・体系化」である。敢えて言えば、そこには実務者が持つ問題意識はない。その点が、私が聴くと不満の生ずるところ。もちろん彼のせいではない。
そこで、デザインを世界に存在意義を高めるためには、前述のように、彼のような人たちと我々のような人間と、更には経済・政治が判る人たちとの協同作業が必要だろうという話になる。
そのことを改めて教えてくれた一夜となった。
(日本デザイン機構主催)