この国を出ない場合

【論】


このままでは日本もギリシャのようになるのか


昨日の続き、となりそう――どうも面白くない話題なのだが、カネの話であるので避けて通れなくて。仕方が無くて、一回だけは取り上げよう。


ユニクロ柳井正社長の言い分は、「必死で稼げ、日本で駄目なら稼げるところに行け」だが、米倉誠一郎氏と申し合わせたようによく似ている。
その言い分は、よく聞いてみると、一見聞くに値することも多々ありそう。

昨年に、こういうことが気になって、「この国を出よ」(大前研一×柳井正著)を買ったが1頁も読んでいない。

そこで週刊誌に柳井発言が出ていたので読んで見た(週刊現代12月15日号「日本人よ、もっと必死でカネを稼ごう」)。


まず、言い始めの「この国の政治家は本当にダメ」は同感。こうい政治家ばかりの国では、気づかぬうちに熱湯になったらカエルは茹で上がるしかない、も判る。
次に、「日本経済を良くするためには、あらためて「稼ぐ」ことの大切さを、すべての人が真剣に考えるべき」だと。「いまは、稼いでなくて、みんなが遣うばかり。これでは国は潰れますよ。ギリシャと何も変わらない。それなのに、未だに日本は大丈夫だと言っている経済の専門家がいる。信じられません」


これは日本人の、「サラリーマンを『身分』と勘違いして安穏としてしまう『サラリーマン気質』に問題があり、また職人気質も強すぎて技術だけで勝負しようとしている。グローバル化した社会では、技術もノウハウも、世界中に瞬時に伝播してしまう」ということだ。


でも、こんなことは判り切っているんじゃなかろうか。で、必死に稼いでどうしようというのだろう。
「貧しさは、夢や希望を奪うのです」はよく解るが、目的もなく、どう必死にやっても稼げない人たちの居るこの国のシステム(ウォルフレンの言う)のことはどう思っているのだろう。


そもそも柳井社長の仕事は、大量生産、大量販売により、アイデアはあるにせよ、商品単価を極端まで切り詰めるという、あまりにも知られ過ぎた古い経営戦略そのものなのではないか。この場合のグローバル化とは、当然原材料を安い国から購入し、人件費の安い国で生産し、購買力の高い国で販売するということに過ぎない。


こうしてみると、こういう経営者がいてもいいが、文化的価値のようなものを相手にしている我々には何の知的興奮も与えないと言うことになってしまいそうだ。つまり、「だから、この国を出よ」と言われても、儲かるところ、稼げる国へ行け、ということ以外、何のアドバイスにもならないことになる。人は、自分がやりたいことが「カネ儲け」目的でない場合、このアドバイスは何の役にもい立たないことを知るのだ。
ギリシャのようにならないためには、国民を「カネ儲け」に専心させるのではなく、国際的な観点からの、知恵の事業化や個人の創意の経済的保護などを通して立ち上げる「新しい日本のシステム」の設計と施行だ。