鈴木博之先生への追悼

【日記】


これからだという時に



去る2月3日に鈴木博之先生が亡くなられた、とネットで知った。
まだ、嘘じゃないかという気がしている。
一ヶ月前ほどにセミナー会場で会っているので、昨夜になって聞いて本当にびっくり。
インフルエンザからの肺炎らしい。68才とはあまりにももったいない。

鈴木先生とは少なからぬ縁があった。もっとも、多くの人と親交が深かったようだから、自分だけが特別だったなどと言うものではない。
ちょっと恥ずかしい私的なことになるが、直接にはかって一時、博士号を取ろうとした事があって、東大教授時代にいろいろ相談に乗って頂いたことにある。だから2人だけで食事を共にしたこともあった。結局、出した本を読んでくれて、「ここまで書けるなら、博士号でなくてもいいのでは?」となり、時間を掛けて論文をまとめられたら、また見て頂くということで終っている。
これでわかるように、会っても特段に私的な生活にまで深入りした関係ではなかったので、ご家族や親友との縁は無く、亡くなられた事も元は家内情報からだった。
それでも、こういう場で言っていいかどうか判らないが、「もう(東大教授を)辞めたい」とか、どの建築家が一番、常識的だったかとか、新歌舞伎座の設計裏事情とか聞いていて、ずいぶん素直な人だなと親和感を深めてきた。
確か、新国立競技場設計競技の審査員でもあったと思うが、僕自身が批判派になっているので、問う事はしなかった。もしかするとこの件では、心を痛めていられたかも知れない。
歴史建築への視線、各種の建築審査委員や建築評論家として、そして沢山の出版物など、成された多くの仕事については、ここで説明する必要もないだろう。


まさしく、これからいろいろと相談したいと思っていた矢先のことだった。

ご冥福を祈ります。