ミラノ通信2017春

ミラノ在住の知人、深澤正篤さんから最近の情報を頂いた。
サローネ(国際的な家具展)参加などで、ミラノ近辺に行く人はどんどん増えているが、生活情報として伝えられるのはやはり在住者であろう。
少し修正させて頂いて、掲載します。




大倉冨美雄 様

大変大変ご無沙汰しております。そちら様お元気の事と存じます。
やっと暖かい日が続くようになりました。

ミラノは、まあ兎に角、昨今は外人が増えました。地下鉄に、ある時間帯乗りますと、前の座席に移民(外人)ばかりということも珍しくありません。外人と言ってもイタリア生まれも多いでしょうし、イタリア国籍を取得した人もいるでしょうが。
移民の2世3世も多く、アラブ諸国やアフリカ、東欧諸国からの移民・難民が増えており、イタリアは多人種・多文化の社会になりつつあるように見えます。その受け入れをめぐり、政治的に左派と右派が対立し軋んでいます。


さて、昨今の経済状況は相変らず不景気で、若者への仕事は非常に少なく、故に海外に職を求め国を出る者は多いようです。
最近のISTAT (国立統計協会)の統計によると、イタリアは35歳以下の10人に7人が両親と生活、又、収入の無い人が350万人と言われ、ますます格差社会の到来と言われています。それでいて長寿国。65歳以上の人口割合は22%とEUで一番の老人国だと言われます。
在留邦人数は一時に比べ確かに減っているでしょうが、日本文化友好会や、日本文化に関わる学校でのレクチャ−や美術館でのワ−クショップ、日本料理教室が個人のレベルでも開催され、あちこちの街で同好会が形成されています。
例えばベルガモ近郊では、80名ほどのイタリア人と結婚した日本女性がいるそうで(!:大倉)、家族も大きくなりつつある様です。
女性は、自ら生まれた国の文化を運ぶ使者的立場にあるでしょう。(日本だけでなく世界中の女性が、異なる文化を異国に運んでいることになりますね)


この様な社会ですので、それゆえか、ある一定の日本食ブ−ムは続いています。寿司や刺身(ス−パ−でも販売)、近頃はラ−メンも人気が出てきました。数は多くは無いですが発展しています。店主は日本で学んだイタリア人が多いようです。
寿司の店は圧倒的に中国人の店が多いです。近頃の彼らのやり方は店を専門化せず、中華、寿司・刺身、ピザを含むイタリア料理を並列させメニュ−を出す方法が多くなったように感じます。戦略的に客の好みにどうにでも対応する方法で、まあグロ−バリズムへの一つの型かなとも思えます。
引き続き食の話ですが、日本の観光地にもこの傾向はあると思いますが、以上からも、近頃のミラノの中心地域はやたら食べ物屋が増えました。数年前までは法規で同じ通リに同業種の店を近くに作ることが出来なかったのですが、市から許可され、通りに沢山、バーやカフェテリア、アイスクリ−ム屋などが群れるようになりました。新たに設けた開口部から手渡すなど、ファッサ−ド(表通り面)の変化もかいま見えます。又、ポルティコ(柱廊)の下の歩道にソファやイス、テ−ブルを出しその店の営業面積を多くしたり、フランスのようなデフォ−ル(どんなものかちょっと不明:大倉)も多くなりました。




都市の再開発は90年代の大きな汚職問題で政治問題化した為、他のEU諸国などに比べ遅く始まりましたが、少しつつ形ち作られて来ました。
現在ミラノの都市再開発の大な地域は2ケ所あり、1つは旧フィエラ会場跡(Citylifeと総称され、今進行中)と、他にガリバルディ−駅周辺が近年開発され一新されました。昔はルナ・パ−クなどのある野原でしたね。今や高層ビルが立ち並び状景が一変しました。


シ−ザ−・ペリの設計した「ユニ・クレディト・ビル」のアウレンティ−広場は何時も人々で賑わってます。ここは新たなミラノの観光スポットとなった感がします。
ガリバルディ−駅前から見えますが、チーニ・ボエーリの息子、ステファノ・ボエーリの設計した2つの高層レジデンス「垂直の森」は、バルコニ−の植樹がモクモクと良く茂り、「思惑通り」と作者は思っているでしょう。
駅の近くのコルソ・コモは、通りにパラソルにイスやテ−ブルが多く張り出し賑わっています。
その近くのパスビオ通り(あのベトナムのホ−チミンが戦前、若き頃一時住んだアパ−トがある)に面し、長さが約200mで屋根の尖ったガラス張りのビルが最近完成しました。出版社フェルトリネッリの本社で、設計はスイスの二人組Herzog & de Muronです。
単純で純化された建物が、まるで都市の壁のようにと言えましょうか、存在感があります。ここはスペイン統治時代(1535-1706)に作られた城壁が1800年中期まであった場所で、ご記憶あると思いますが以前、植木屋や苗床になっていた空地です。


この様に、ミラノは少しずつ変貌しています。ひと昔前に比べ、都市の場所場所の緑地化は進んでいると感じられます。静かに変わるミラノの全部を網羅できませんが・・・
それではこの辺で失礼いたします。                  深澤正篤 (2017/05/22)






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