日本でも、一人でも起業出来る?

本当に可能なのか              



こんなに小さくシンプルで畳めてしゃれたバイクなら欲しいね!
新聞の、モザイク化された街頭の写る大きな画面に、ちょっと欲しくなるユニークなバイクが写っていて、その後ろに少女(?)が透明キーボードを抱えて立っている。 しかもバイクは後から判るが電動とのこと。

でも、写真だけ見ても何のことやらわからない。


その画面の下に、「たった一人 家電メーカー起業」とあった。 ということなら、これはどうしても読んでしまう(本日の朝日新聞「be」欄「フロント・ランナー」)
この気になる電動バイクは、「昨年の8月の予約受付開始日だけで、120台を超す注文を受け、量販店を驚かせた」とある。
それにしても、この日本で頑張っている若者がいるのも確か、ということも分かった。


どうして可能なのだろうと読み込んでみると、やはり我々が持つ、体得してしまった苦痛の連鎖体験や、頭で考えるネガティブな日本型産業組織形態の成り立ち、知ってしまった日本人の常態的性癖などへの思い込みから来る、いわゆる「頭でっかち」になる以前に、「機械オンチの機械好き」から、素人ならではの無鉄砲も気にしない押しの強さが勝ってのことのようだ。
それに最後に本人が語っているように 「だって、日本の製造業が元気がないって言われるの、くやしいじゃないですか」 という念力もただもの(者)ではなさそうだ。


少し紹介しなければならないが、このヒロインは2015年に、たった一人で家電ベンチャー「UPQ(アップキュー」)を起業した中沢優子さん(32才)とのこと。少女ではなかったが、取材に値する若さだ。その若さと女性という「アドヴァンテージ」があるとは思うが、今、それを取り上げるのはよそう。
当然、そのキャリアには納得するものがある。携帯が好きになり、中央大経済学部在学中に携帯の販売店で働き、カシオ計算機に就職。「美撮り」機能に関わり、連日開発現場に通い、エンジニアの横に張り付いて思いを伝え続け、終業はいつも午前1時。人事部から厳重注意を受けたとか。ところがカシオが携帯開発から撤退、このため退社。秋葉原でカフェをはじめる。そこに「大手携帯電話会社に縛られず、ユーザーが自由に機種を選べる『SIM フリー端末』が普及し始めた。その新市場に製品の企画を胸に中国(深圳)に渡ったのは、起業の1か月前のことだった」。
ここで、この前の当ブログ(2月5日)と繋がってくる。やはり、このようなヤングが向かっている先が深圳だ。凄いのは、香港の家電見本市で目星をつけておいた企業には面談を申し込んでいること。その日のうちに3工場(3社)を渡り歩き、開発したい商品の仕様を伝え、無料での試作を頼んでいる。
今がチャンスだったのは、依頼企業がどんどん生産拠点を東南アジアに移していて、稼働率を上げたい工場が半空き状態だったこと。以前ならあり得ないほんの少量の注文も受けてくれた。「5000台から作って」と粘って交渉したという。もちろん、順風漫歩ではない。認定手続きのミスからの回収、映像表示の遅れによる不具合、配達事故による商品破損など、一人で走り続けたためのトラブルも乗り越えている。「クレーム処理の一方、すぐに中国に飛んで商品の改良や梱包材量の強化なども手配」している。この間に、結婚、一子も生まれた。


電動バイクについては、「香港の家電見本市で年々、(電動バイクが)存在感を増しているのを見て、日本の道でも走れるように改装して発売。 海外の流行を察知し、機敏に国内に移植する目利きでもある」。
このように、販売についても、先輩格の家電ベンチャー社長が「量販店との契約を次々に獲得する営業力がすごい」と舌を巻くほどの感知力と行動力がある。


これを知って判るのは、ベンチャー企業向きの開発者は、好き、粘り、経験、(商品の)社会性への関心、開発人材のメンタル核を知っている、カネの流れを知っている、営業努力を惜しまない、といった広範な知識と行動力を持っていることだ。この行動力や粘りは若い者でなければ出来ない。
人生における自分の思いと能力、社会のタイミングとの合致の恐ろしさを感じてしまう。
この記事は終わりに、起業前から彼女を知る経産省の人(田中佑典氏)にこう言わせている。
「個人商店のままでは限界がある。チームアップする時期が来ている」
そう、まだあった。組織化、運営力、統率力に苦もなく向かえる人でなければならない。


今、また自分のことを思えば、青春時代にただボーッとしていて、多分、いわば画家のような眼だけで、そこで何をするのかも判らずにコート・ダ・ジュール(フランス:プロヴァンス地方)に行きたい、なんて夢見ていた「事業予感のない者」では、出発点からしてとても駄目だということだろう。大学時代は人生でどうしたいのかよくわからず、経験主義に陥り、アルバイトや歓楽街歩き、コンペ参加(「日宣美」など)に明け暮れた。
創ることには関心があっても、売ることには関心が無い。また、人間関係を構築していくことにも興味がない。
これまで多くの身の周りのこのような仲間を見てきた。その多くは美大系だ。精密なバイクの模型だって作ってしまう奴もいる。売ることに関心が無いのではなく、本気になれないか、能力が無いかのどちらか、あるいはその両方だ。その根底には人との協調やそこからのカネ儲けより、自分の内面発露にしか本当の関心がないという根本問題がある。
だからこそ、創ること(と、その人材)をサポートする社会的仕組みを創らなければならないのだ。
(文中引用文:同記事取材者:沢田歩氏)








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