引きずるものがない投資環境

中国最新起業の姿――個人企業の勃興とそれへの支援


人間は蓄積された経験の重みに邪魔されて、新しいことをやるのにそれがブレ―キになる、ということをつくづく感じさせられた。
今の日本人はまさにその経験の重みで、新しい産業構造に気軽に取り組むことが出来なくなっている実例だと実感される。昨日、宮崎駿のことを書いたが、見方によっては、これも同類へのシンパシーでしかなく、新しいことへのエールではなくなってしまうのかも。


また今度もテレビ報道からの印象だが(BS1:22:00ドキュメンタリーWAVE「チャイナ・マネーが見る夢」)、一応、このような日本人の居場所を忘れて、中国のベンチャー・ビジネスへの最新情報を知ると、次の時代への中国人の飛びつき方は、実に身軽なものだと感じざるを得ない。
邪魔な経験や社会のしがらみ、組織決定の愚鈍さが全く無いようにさえ思えてしまう。事実、日本からノウハウを「盗み」(注:悪意を持って言っているのではない。逆に知財権を軽視した日本企業、個人の姿をあまりにも多く身近に見てきた現実を言っている。日本人もそうだったように。ただし、もっと長い時間を掛けて)、世界の工場として稼ぎながら先端技術を身に着けて急成長し、20年か30年で早くもバブルも下り坂となれば、共産党体制以外にしがらみになるものなんて何もないのではないか。
国も、急激に来た工業生産立国への危機感から、カネのあるうちにと、若手の(若手以外に、やる者などいない)ベンチャー企業の育成に積極的だし、それに合わせるようにどんどん若者が対応しているという印象を得た。変化への対応スピードはものすごく早い。取材が深圳を中心にしてはいるが、世界のベンチャー企業も、その育成機関もどんどんここに集まっているようだ。投資対象はほとんどがIoTやAI関係だ。ちょうど、バーレーンの政府系投資会社の巨額な資本参加のニュースまであった。


テレビでは、中国政府も出資する最大の投資ファンド「創新投資集団」への取材からその実情を追っているが、ここに登場する人物たちは、審査する方も、応募する方も、現場職はほとんどが30代そこそこにしか見えない。
若者が、さえぎるものが無く、まったく純粋に将来の中国の発展のために今やるべきことに邁進している。この情景を見ていると、あの高度成長期に自分が見た、日本の産業界の未来を夢見て企業になだれ込んだ若者たちの姿とどこか共通する。


トランプを見ても、このままでは次の世界のリーダーはやはり中国かもしれない。
日本はどうする? このままじゃ厳しい。若者が夢をもってチャレンジできるような社会風土にはなっていない。主な問題は規制や手続きの煩雑さ。客観性ばかりを重んずる風土。それが面倒と時間とコストを呼ぶ。民間も、ここまでは個人を信用しなかった。「蓄積された経験の重み」とは、そのこと、つまり出来上がった価値基準の体制だ。







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