楽器放談

先おとといあたりの夜のNHK第一で、プレミアム何とか、という番組名だったように思うが、「ピアノのすべて」をテーマにしていた。
カザルスと結婚していた原智恵子が、夫との死別後、ひっそりと日本に戻っていて、2001年に86才で老人ホームで亡くなる前までの話など、よく出来た番組だったが、画面で識別できるピアノがすべて「ヤマハ」だったのには感心しなかった。
日本のピアノ・メーカーには少なくとも「カワイ」もあるわけだから、公共性を考えれば一社だけ出すのは問題だ。
実は僕の事務所では最近、河合楽器の店舗改装などのお手伝いをしているから、余計気になるという事情もある。
ピアノ曲にも一段と魅せられるものを感じている矢先だし、ピアノが楽器の王様だというこの番組の話も合点がゆく。そうであればあるだけ、そういえばNHKに苦情メールでも送る必要があるか、と考えているところだ。


ヤマハは最近、とみに元気がよく、なかでも電子楽器への取り組みが進んでいる。番組の中でも、ピアノ自体をニューヨークと同時回線を繋いで、ニューヨークで演奏すれば、まったく同時に東京のピアノが鳴りだすという実験を紹介していた。
他にトランペットやヴァイオリンの電子化があり、僕は審査とか紹介とかで、これらに縁がある。もちろんヤマハのデザイン部長の吉良さんともJIDA以来、ご縁がある。


このヴァイオリンだが、一般に「サイレント・ヴァイオリン(以下SV)」と言われていて、あまたのデザイン賞を貰っている話題の商品である。
この楽器が、例の「新日本様式100選」にも選ばれていて、今度のパリお披露目でも紹介される。
特に暫く前の日記に書いたように「7分映像」を制作中だが、そこでも取り上げることにしたために、撮影をすることになった。置いておくだけや、スチール写真ではデザインのユニークさ以外、何が面白いのかわからないからだ。
この楽器は演奏練習していても周囲にまったく迷惑を掛けない(演奏者はヘッドフォンで自分の演奏を聴く)ところが売りなのであるから、映像制作でも「そこ」を見せなければ意味がない。台本では、女の子がレッスンしている傍で、オトーサンが本を読んでいるシーン、などとしている。


今日、このSVについて、制作のディレクターから電話があった。
「突然ですが明日、大倉さんのお宅の居間で撮影させてくれませんか?」
場所が見つからないのか、経費節約からの発想かどうか知らないけれど、「特別きれいじゃないけれど、それでよければいいですよ」と答えた。
暫くして、もう一度電話が鳴り、「オト-サン役は大倉さんでいいでしょう?」
数秒というので構わないとは思ったが・・・
風邪気味というのに、この顔でパリジャン・パリジェンヌにお披露目ですか。