ああ、ピアノよ、どこへ行く

【日記】


「モノを大切にしない国」にまで発展する話。



この国は何と言うか、とてもドライなところがある。人間はウエットなのに。


話はこうだ。
地震が来るかも知れないという予感におののいて、家内がピアノ(アップライト)を売りたいと言い出した。ウォルナットの家具調仕上げで、居間の重みを増してくれていた。


いくつか専門業者に問い合わせたところ、いいところで運搬賃込みで8万円だという。
買った時は60万位したと思う。それがたったの8万円。もっとひどい所は、運搬車の稼働事情(家の前に近づけないとか)が読めない(袋小路の3階)ので、引き取るが支払はない、というひどさ。
息子のために買ったのだが、早々とピアノは止めてしまった。その息子が音楽関係に行っているのに何も協力しない。
ネット販売も出来るだろうに、「原価償却しているということで、そんなもんだろ」とすげない。
あれから19年(平成5年の購入)、メンテは大切にしたし、ほとんど使っていない新品同様に思えるが。

ことピアノとなると、搬送の問題が大きく、ネットでの販売などにも注意が行かないのかもしれない。


何が言いたいのだろう。
日本人はモノを大切にしない。かというと、ストラディバリウスのヴァイオリンのように、古いほど値がついて気違い的な価格で求める者もいる。
僕が特にモノにこだわり過ぎているのか。思うに、こんなにスクラップ&ビルドや、買い捨てが平気な (というより、そう仕向けられたとしか思えないのだが) 国民は他にはいないのでは、と思ってしまう。
きっと、調整して外国にいい値段で売るのだろう。ここは、生活者ベースでなく流通業者ベースの世界だ。

日本人はもともと、地震津波で流れゆく民だった。モノへのこだわりを消して平気な輩も多いのだろう。
これは書いている原稿の底流にもなっているが、とても不愉快な気持ちだ。
ピアノ一台でこんなことだから、僕には整理が大変だ。いつも家内といさかいになる。
ピアノは先ほど出て行った。