CK@常在寺釈迦殿と林昌二氏宅を褒める

【住いの話】


1:寺にしては洒脱な空間設計の常在寺


数日前に親戚の葬儀があり、式場である世田谷区弦巻の常在寺釈迦殿に始めて行った。


この寺の会館は誰が設計したのだろう。なかなか良く出来ている。
傾斜地なのかもしれないが、エレベーターで1階からB1に降りると、眼の前に、通路向こうのガラス壁越しに水を湛え(たたえ)た中庭が現れる。また2mくらいの高さのある大掛かりな滝があり、その音が響き渡り、環境音楽となっている。

それらは外部(屋根なし)に開けた内庭となっていて、それを全面ガラス貼りの回廊状控えスペースや親族待合室が廻り、そこから本堂も見え隠れする、という設計になっていた。
中庭は中央に横断用渡廊下があり、それ以外は全面に池であり、滝と石材加工による造形物がかもし出す枯山水ならぬ生山水といった風情。
仕上げも壁まわり、建具を抑え気味によくまとめてあり感心した。



2:造形優先より視線と空間量にこだわった林昌二・雅子邸

最新のINAX REPORT/182号に林昌二さんのご自宅が紹介されている。
この住宅は1981年に「新建築」誌2月号で取り上げられていた。たぶん見たとは思うが、印象が強くなかったのか、こんな家だったなという記憶しかない。
しかし心休まる家が少なくなってしまった昨今のせいか、今回、ページをめくって眼に入ってきた瞬間、これは住みやすい家だと直感した。
林さん、あるいは奥様との協同プランのこの家は、中村好文氏の紹介で、例の暖かいスケッチ図面がプランの秘密を教えてくれる。ここにはそこここに設計のノウハウが隠されている。


中村氏は林さんのことを、「動物的とも言ってよいスケール感と、ディテールに対する卓越したセンス」の持ち主だと言っている。さらに、「この住宅を設計したころの林さんは大規模なオフイスビルの設計に明け暮れていたと思いますが、その反動もあって小さな空間を設計することに特別な情熱を燃やしたのではないでしょうか」とも。とてもうまく言い当てていると思う。


林さんとは、「ヨーロッパの21世紀を覗く旅」建築ツアーでご一緒した。実に収穫の多い旅だったこともあって、その後、同行した建築画報社々長の桜井洵子さんらの音頭取りで、七夕会として毎年お会いしてきた。
このツアーの後の僕の印象記を読んでのことだろうが、「大倉さんはなかなか器用だね」と言われ、「いやぁ、実は起用貧乏なんですよ」と言ったところ、「そうとも言える」と言われ、笑い合った事がある。でも林さんのお宅を拝見することは無かった。
林昌二さんは日建設計の副社長、副会長までやられた建築界の重鎮である。