原発余波

【情報】      (翌日記あり:3節目 *印)


1:専門家もイライラ


本日の、ある高レベルの科学技術者の多いあつまり(と言っても5,6人のことだが)での食事の際に出た話だが、日本学術会議や学会、特に東大の教授らが今回の原発震災に何も言っていない、ということが問題となった。そういえばそうだ。(翌日記あり:3節目 *印)
そこには原子力事情をもっと知っている人がいるわけだし、人材は居るのから、現在のように個人的に呼ばれてパラパラ言っているのではなく、それらの人たちがグループで今回の原発破損への対応を発表するように、しかも英語で発信するようにと言っているのだが、という学者もいた。


それに対して、やあ彼らは実は原発推進の当事者だから、今は何も言えないんですよ、という人もいた。


またある人は、あの福島原発は40年前に、欧米の知識と技術を導入して造ったものだから、当時の技術を把握している当事者はいないのでは。それに設置の工事をしたのが下請けで、それらの技術者の方がよく事情を知っているのだが、もうみんな死んでいるのでは、というような話をしていた。


いずれにしても、「ここで言いたいことを言わせてもらったので、少しはすっきりしたよ」とって笑って帰っていった人もいたところを見ると、科学技術者たちのフラストレーションも相当のようだと思わされた。当然、扇動型の記者や悪く情報を利用しようとする者たちのいない場でのことだった。

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2:建築家に出来ること

 
過日の、私が代表になっているJIA(日本建築家協会)港地域会の定例会で語られたことを、議事録として会員に報告されたが、以下に一般化するかたちで主要部を書き換えて報告します。


われわれが行政側の視点に立つのか、住民側の視点に立つのか、その綱引きでの脚の置きどころによって全く変わってしまう。建築家はどちらなのか。


今度の大震災については、直接の被害が大きく、地震津波原発事故と三重苦と重なるため、建築家の出番以前の問題が大きく未整理のまま。
エネルギー燃料確保の問題は、これにより日本が今次大戦を引き起こしたように、国家の基本的な価値問題に帰着する。フランスは原子力大国になることによって、石油で他国に振り回されることが無くなった。エネルギー拡大は政治の問題になってしまい、人間生活の満足という観点からは語られなくなってしまっている。


安全化をどうデザイン化出来るのか、我々の課題。
建築家に出来ることを提案するしかないが、それは敢えて言えば募金や地域避難民の救済のための現地活動などより、原発被害と、10mを優に越す津波被害を受けた住み慣れた土地に、どう住居を回復させるのか、すべきではないのか、あるいは抜本的なまち造りの方法があるのか、それはどんな提案か、原発シェルターは提案できるのか、というようなこと。われわれはそれを議論し、提言したい。


「メンタルケアの問題として、今までの不都合から、こういうまち創りではないかという考えを抱くように働きかける。体験と土地柄を踏まえて。どんな港、どんな浜辺?自分たちの未来のまちを子供たちに語ってもらう」、 「東北支部と復興のためのテレビ会議は出来ないか」、 「すでに被災現地の設計依頼を受けているので話を聞きに行く」、 「簡単に言えることは、住居間にRCで基礎のしっかりした避難塔状の建物を点在させて建てることだ」という話などが具体的だった。

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* 翌日記: 日本学術会議 金澤一郎会長のメッセージ


 日本学術会議からは3月26日に以下のように、デザイン学会を通して意見募集というかたちでの情報提供がありました。
それを添付しておきますが、やはり、「考えなおす、取り組みを必要とする、緊急作業も少なくない、方策を真摯に模索し、責任を自覚して行動する」、という内容です。
また、「幹事会声明を発表、緊急集会を開き、対策委員会を設置」としていますが、具体的な声明として出されたものを読むと、原子力への対応方法の記載はありません。


これでは、覚悟はさることながら内容が無く、やっていることもマスコミの話題になっていないとしか受け取れません。
1:での話は多分、この辺の事情を判断して、連名でもっと具体的な判断を出せと言ったのだろうと思われます。
敢えて、読まれる必要もないと思われますが、参考までに受信文を添付しておきます。



日本デザイン学会会員各位
 日本学術会議より、意見募集が届いています。


日本学術会議協力学術研究団体 各位

 東日本大震災への学術としての対応についての意見募集

 平成23年3月11日、三陸沖を震源地にマグニチュード9.0の巨大地震
発生し、東北地方太平洋沿岸を中心に広い地域を襲った巨大な津波を誘発して、
多くの方々の貴重な生命を奪いました。この未曾有の地震津波の犠牲者の方々
には、心からの哀悼の意を捧げます。
 今回の事態に照らして、災害の衝撃に対する日本の社会・経済システムの備え
を厳しく点検しなおすこと、災害を予測・予防するために、学術がどこまで有効
に貢献できるかを冷静に考えなおすことは、必要不可欠です。この再点検、再検
討の作業は本格的な取り組みを要する中・長期的な課題ではありますが、現在も
継続中の危機に有効に対処するために早急に必要な緊急作業も、決して少なくは
ありません。
 日本の学術の担い手を結集する日本学術会議は、今回の災害が顕示した日本の
社会・経済システムの脆弱性を謙虚に受け止め、その改善の方策を真摯に模索し
て、次代に安心して引き継ぐことのできる新しいわが国の社会を構築するために
科学と技術を活用する方法を、社会に向けて説明する責任を自覚して行動します。
 このため、日本学術会議は、3月18日に「東北・関東大震災とその後の原子
発電所事故について」と題する幹事会声明を発し、日本学術会議はこの惨状の
克服に向けたあらゆる努力に協力する覚悟を表明しました。
 また、同日、日本学術会議講堂において、一般参加者も加えた緊急集会を開き
ました。この集会では、日本学術会議が、一般市民の方々やメディア関係者の方々
とともに、「今できること」について、喫緊の問題と、中長期的な問題との区別
を意識しながら議論しました。
 さらに、同震災を東日本大震災と呼ぶこととし、3月23日には東日本大震災
に対する日本学術会議の取組に関する事項を審議するため、東日本大震災対策委
員会を設置し、3月24日に第1回を開催しました。
 このたび、同委員会において、学術としての同震災への対応を幅広く審議する
ため、協力学術研究団体からご意見、ご提案などをいただくことにしました。
 アドレスは以下のとおりですので是非積極的にご意見、ご提案などを書き込ん
でいただきますようお願いします。

 アドレス:https://form.cao.go.jp/scj/opinion-0025.html

 お書きいただいたご意見、ご提案については、個別に対応するのでなく、同委
員会の審議に活用するものである点をご了承いただければ幸いです。
 なお、日本学術会議における上述の幹事会声明及び緊急集会報告については、
日本学術会議のホームページ( http://www.scj.go.jp )に掲載しておりますの
で是非ご覧になって下さい。
                        平成23年3月25日
                          日本学術会議会長
                                金澤一郎

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