「その上のこと」でしかないのかも

珍しくも気分を変えて、政治関連記事としてみるか・・・       ● 11月7日になって、後段に追記あり ●

―「構想日本」のセミナーに参加して―


構想日本」(加藤秀樹代表)という団体の案内を時々貰うが、ほとんど行ったことが無い。

団体名がかっこいいので、氣にはしている。

過日、ここのセミナーがあり、予定はしていなかったが、急に時間の空きが出来たので慌てて参加してみた。

参議院当選議員(新人)に聞く」というテーマで、参加者は以下の通り (ただし自民党議員は党の集会とぶつかって無参加とのこと。また、直接関係ないとしても、若い頃の学歴(特に専攻)も個人のメンタルに含みを持つので、敢えて書き加えている)


石井苗子(いしい みつこ)日本維新の会比例代表

    保健・医学・母の声・女優だったのがいつの間にか保健学博士号(東大大学院)を取り議員に(高卒後単身渡米、ワシントン州立大卒)

伊藤孝恵(いとう たかえ)民進党・愛知県

    OLから子育ての問題に開眼、「10万人と握手」をモットーに、経験だけで議員に。その分、いろいろの分野の人の参加を、と。(金城大文学部卒)

伊波洋一(いは よういち)無所属・沖縄県

    沖縄県議、宜野湾(ぎのわん)市長経験などパリパリの沖縄人。関連著者多数(琉球理工学部卒)

片山大介(かたやま だいすけ)日本維新の会兵庫県

    皇室・労働問題・最近、早稲田大学院に通い修士論文「TPPと日本の農業」・最近までNHK勤務(慶應理工学部卒)

木戸口英司(きどぐち えいじ)生活の党と山本太郎となかまたち岩手県

    地方再生・被害のルール化・教育・雇用・小沢一郎秘書・岩手県議から(千葉大法経学部卒)

杉尾秀哉(すぎお ひでや)民進党・長野県

    最近までTBS(東京放送)勤務でキャスター、コメンテーター、各種審査員、客員教授など実績多数。(東大文学部卒)

司会;加藤秀樹(かとう ひでき)

    大蔵省勤務後、思いを実行するため独立、「構想日本」を立上げ。「事業仕分け」など広範な分野で政策提言を行い、実現したものは30以上。医療・介護・地域金融政策などが中心。


この7月の参議院選挙の新人当選者で、立候補約500人(うち新人276人)、当選121人(うち新人44人)だった。そのうちの6人の発言。ほぼ40代から50代と思われる。加藤氏から、「付託を受けて何をするのか」など、3点余りの共通質問が出されていた。


結論としては有益なセミナーだったが、僕の関心ごととは離れていた。

何故か。ここに新人議員の、というより、ほとんどの日本の政治家が抱える限界がある、という感じがしたからだ。人間、誰でも経験の「則」を越えられないとは語ってきたところだが、政治家もまったくこの典型のようなものだと実感させてもらった。

まず1人10分ほどで、なぜ議員になったかなど思いを語ったが、「眼をみて握手する」「10万人と握手する」「定数がどうの…」「野党連携の必然性」「自分の選挙地盤の問題」など選挙戦略のような話題と、育児保護、被災地問題、沖縄問題、雇用、地方再生など自分の関わる分野からの話に終始した。

新人議員の半数が報道関係分野の出身だ、とのことも驚きだが、あたかも「何か根本的なことが抜けた人種」が「議員適性」を獲得しているかのような印象を持ったのも事実だ。司会の誘導の仕方では、もっと違う観点や面白さも出たのかもしれないが、そこまでは預かり知らない。それは聴衆の方にも、安倍政権批判などへの強要を求める発言など、同じ土壌かもしれないという人もいて、そちらの方に多く議論が収斂した。



終って、1人1人に挨拶しようかと思った反面、何で無意味なことをやるのか、という気持ちも強かった。その場で迷ったが、どうもその気になれなかった。会場で手を挙げて発言しても、宙に浮くようなことを言っていると思われ、捕らえ所が無くなってしまいそうなことが後を引いたようだ。

それは、手前勝手な言い方を許して貰えれば、議論のレベルが一段、違うということかも、とも思った。 「その上のこと (大きく変わる時代の、この国の未来への理念的なこと。もっとも、政治家の皆さんから見れば「その下のこと」なのかも) を話したいんですよ! あなた方は若いんだから」 という訳だ。 こちらが勝手に舞い上がっているのかな?
このことは、こちらの立場からすると、非常に憂慮する問題を露呈している。政治家が文化(人と産業の未来を含む)を語らない、だけでなく、国民が「政治家は文化を語らなくてもいいんだ」という心理状況にあると言えるからだ。丁度、今日(10/6)の日経新聞の「春秋」欄にもあったが、文科省が文系学部を削減するともとれる判断をしていることへの問題提起がこのことを表している。

そんなことだから、こうも考えた。
発言して新人議員を教育する? 何の資格があって? 何の勝算があってやるのか。 各議員の持っている経験はそれなりに深いと言える。そこに戦略と生きがいを見出していて悪いことは少しもない。 俗に言う価値観の違いとも言えるのだ。
あるいは、新人議員と仲良くする? でもどうせ、応援する会の会費を出させられる以上のことは期待出来ないだろう。だって述べた通り、何か「こちらが期待することが最初から、脳裏から抜け落ちている」ようだからだ。

それにもし、このうちの1人が例えば総理大臣になったとしても、こちらはこの世にいない可能性も高そうだ(苦笑)。 行為の無意味な確率は高い、と。

ということで、残念で空しい気持ちで帰ってきた。ただ、これで終わりにするな!という気持ちは消えていない。


(9月27日開催、赤坂:日本財団ビルにて)


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● 11月7日の追記 ●
上記の記事を書いた後、このままではもったいないと勝手に思い、加藤秀樹氏にこの記事を連絡方々紹介した所、非常に誠実な感想を送って頂いた。
個人間のメールだし秘匿しておこうと思っていたが、中々そういう気にはならず、何かの折にひょっと思い出してきた。


しかし考えてみれば、沈む気持ちはお互い様だろうし、まったく事実と言える正論なのだから、加藤氏が了解して下さるなら公表してもおかしくないのでは?という気持ちになって、だいぶ経ったが連絡させて頂いた。
その結果、公表してもいいとのご返事を頂いたので、以下に紹介する。



大倉 冨美雄様


率直な感想をありがとうございます。
もし私が一聴衆として参加したなら同じ感想を持ったかもしれません。
J.I.フォーラムは、バラツキはありますが、概ね構想日本と価値観や問題意識を共有する人に登壇してもらっています。
例外は政治家です。とくに、新人議員については、選挙後、ある程度の人数を呼び来場者の方に観察して頂くのが主眼になっています。
私も観察者の一人ですが、正直なところ、これは、という新人議員は残念ながら多くはありません(主催者がこんなことを言うのはまことにケシカランことですが)。
しかし、それでもこのフォーラムを続け構想日本の活動を続けているのは、議員や政治を現状のようにしたのは我々国民だからです。
聴衆の一部にいましたが、あの場でいくら議員を責めても、問い詰めても、それで彼らが変わることはないでしょう。
政治や議員を変えるには、我々が日常の中で政治のことに関心を持ち続けるしかないと思います。時間がかかっても、青臭いと言われても。フォーラムはその一コマだと私は考えています。
率直なお考えを伺えるのはありがたいことです。そこで私も率直なところを申し上げました。

                                            構想日本代表  加藤秀樹