*デザイン学生に語る

*デザイン学生に語る

JIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)での話                  

                          

昨晩、JIDAジュニアーという学生中心の若い人たちのサークル活動に呼ばれ、あること、ないこと(言葉の綾で言っているが、ないことを言っているわけではない。念のため)思いついたことを話すという場があった。
掛替えのない青春!彼らはこの青春の真っ只中にいる天涯の自由さを実感してはいないだろう。このいとおしさは後で気がつくものだ。

昨晩に限ったことではないが、大学生たちに囲まれている間中、いつも、どこでも気がかリだったのが、「この子たちはどういう人生を歩んで行くのだろう」ということだった。これはむしろ気がかりというより、感慨だ。
教員と言えども、教え子の人生の道順を作ってあげるわけには行かない。指導ということはあるが、強制は出来ない。何だかんだと言っても、学生本人がこうしたい、ああしたい、という希望を唱え、それについてアドバイスするのが関の山だ。それがたとえ、危なっかしい道であっても、ということになる。


何でも話してくれというので、過日のパリ三越エトワールでの日本紹介の7分映像(新日本様式)の実写、アンケートによる学生諸君の読んだ最近の本へのコメント、自作の紹介と、忙しかった。
言われるまでもなく、最初から、デザインの話などしないよ、と思ってはいた。デザイン学生の知見の狭量さを打破したいとも思ったからだ。
話の間に、持って行ったワイン1本を皆で分けたら、紙コップの底3センチ位にしかならなかった。17人もいたからだ。でもこれが「おもてなしのこころ」ということで、座は盛上がって行った。


ここで、彼らがこの半年以内でデザイン書以外で読んで印象に残っているという本を紹介したい。
メモ紙に書いて出して貰ったため、著者名の記載なく、僕も判らない著者名は記載しないでおく。(複数記載可)昨今のデザイン学生気質が見えるのだろうか。

[文芸書(と思しきものを含む)]
天使と悪魔(ダン・ブラウン)、希望の国のエキソダス(村上龍)、永遠も半ばを過ぎて(中島らも)、砂の器松本清張)、イン・ザ・プール奥田英朗)、淋しい狩人、アムリタ(吉本ばなな)、宇宙を孕む風、スプートニクの恋人村上春樹)、人間の土地(サン・テグジュベリ)、
[教養書、技術書の類]
かかわりの教育、学習と発達、生産工学、町工場巡礼の旅、夢を与える、希望格差社会、新・資本論大前研一)、芸術起業論(村上隆)、自分の仕事をつくる、パソコン的、レベル7、花数寄(黒川紀章

(16人中、何らかの印象を受けたデザイン書を読んでいる者は6人。殆どが2冊挙げている。書名は略)

これを見て、淋しいと思うか、なかなかやるねと思うかは、「個人の自由だ」が、こんなものか、というところか。


そこでの話は呑みやに移っても続いた。青春真っ盛りのヤングとなれば、もう少しつき合ってみたい。そこで一緒に呑みに行く事とした。

夜が深け、段々収斂して行った話は、明治130年の現在的意味ということだった。