東京デザイナーズ・ウィーク(その2)

東京デザイナーズ・ウィーク(その2)

Seeing Tokyo Desigener's Week (No.2)


フリーランス・デザイナーのためのニュー・タイドへ―
―Prospecting the new tide for free-lance designers―




ドーナツ状の面白いコードタップを開発商品化したJIDAの倉方雅行君、テトラポット風の3点支持ブックエンド、ルーペや手鏡を開発した中林鉄太郎君、孔空きハート形がカップに食い込む握り部をもったカップを作った仲間の内藤智康君などの仕事は楽しく面白かった。


その他、ちょっとしたアイデアの照明器具や家具などに興味を引かれたが、そのグループ商品の一つ位はいいとしても、どれももうちょっと、というところが感じられた。
できれば僕が展示品の中から、ミュージアム・セレクション的に選定してふるいにかけ、もう一度再展示したら、ぐっとデザイン展らしくなるのになどと思ったりもした。


会場を廻っていても、同世代はほとんどいない。中年さえもいない。もっとも自分がこの間まで大学で、このようなヤングに取り囲まれていたこともあって、自分では何の違和感も感じなかったが浮いていたかも知れない。

おまけに地理に自信があると思って、夕暮れの神宮外苑を別展の「Design Tide in Tokyo 2007」に向かって歩き始めたら、間違って神宮球場に迷いこんでしまった。国立競技場の横とわかって辿りついたらちょうど5時。「閉展です」と言われる有様。
こんな調子だから、ほとんど他の協賛会場に足を運べなかった。したがって、以下の判断も偉そうな自己満足かも知れないが、それはそれとして、考えたことを述べよう。



一通り、メイン会場の主要展示を見たが、結局いくつかのカテゴリーに分けられそう。

1・商品発表の場のない日本の中小企業の見せ場
2・商品発表の場のない海外の中小企業の見せ場
3・創作個人、グループの試作品発表、市場開拓の場
4・ネットで繋がったのかも知れない国際的グループの発表の場
5・学生・若者参加数に目をつけた大手企業の広報活動的参加
6・手工芸的な伝統技術の商品化紹介
7・国レベルでの産業工芸紹介


これで判ってくるが、基本的に、どこに持って行けばいいかわからないような販路不明商品を抱える中小・個人企業・作家の自己紹介、あるいは日本で売りたいが販路の不明な海外小企業の参加が中心の紹介・販売・仲介のイベントである。
これを、新しいトレンドの場のように仕向けているところが見せ場である。


昨日も書いたが内容の多くは、大学の卒業制作をそのまま持ち出したようなレベルで、屋外のコンテナー屋根上の裸展示場はまさしくそのものずばりである。


それでもこれだけ学生・若者が集るのは、その「卒業制作集合展」的な仕組みに、全国の大学当事者や学生たちが乗っているからで、それが結果的に集客効果も生んでいるのが見て取れる。それはそれでいいだろう。
それがベースとしても、こういう場でしか、商品発表の場のない中小企業や個人のこと、それに同じような意味での海外企業を考えて見ると、全国物産展とか郷土名物展示会のようなものに比べ、いかにこのような「新し物好き雑貨フェア」が無かったかが判る。


何よりここにあるのは「21世紀の先進国で見つけようとしているローテク・モノ商品の模索」である。
そしてそれを支えているのが、「何とか自分たちの手の内だけで生きていける職能を模索するフリーランス職業希求人たちの願い」なのだということが実感として感じられてきたのだ。


大学を出ても殆ど自活の道がみつからない現今のデザイナーの現実からも、一度勝ち取った自由への思いからも、学生たちはそのことを肌で感じているだろうし、そのことは、とりもなおさず日本の大企業中心体制への参加拒否要求なのであろう。
そういう意味では、このウィークに限らず、日本中に毎年溢れるデザイン大学卒業生の願いが一身に込められたデザイン・ウィークなのだということが言えそうだ。
そういう視点で眺めて見ると、これは他人事ではない。

会場で立ち話をした「イス塾」の井上昇君との話でも、彼自身がそういう職能のパイオニアでもあることがわかったし、VIPルームで会った川上元美君からも、フリーの立場のためにも参加して・・・と言われた次第。

このウィークへの何らかの参加は、前向きに考えてみることとした。
僕自身が、本来こういう視点からの旗振り役にならなければいけないのだ。