C@あァ、青春!

【日記】




閑話休題…青春の想い出



つけ放しの事務所のラジオからシューベルトの「菩提樹」が鳴り出した
こういうのって珍しく、突然のことで、慌てて音を大きくする
歌っているのはたぶん、ヘルマン・プライだろう
シューベルトは、冬の旅を作って37才かそこいらで死んでしまった


何と言おうか、自然と涙がこみ上げて来るような気がした
あァ、青春! 過ぎ去りし日々! 少々、オーバーかなぁ
あんなに人生の内実が詰まっていた日々があったのだ、という気持ち


僕はこんなにもドイツ・リードに酔っていたのか、とも思う
作曲家の卵、橋本君と寮で過ごした日々の影響だろう
そのころはイタリアというイメージは自分の内になかった


学内に大柄のかっこいいドイツ青年がいて、すでに同じく学内の日本人の彼女がいた。
その子がまた僕の好みで、何かやられたという気持ちもあったが、この男なら許そうという気にもなっていた
学内の木立の中でよく見かけたものだ
あの二人はどうなったのだろう
40年以上も前なのに、昨日のように瞼に浮かぶ


それにしても、この歌曲の瑞々しさはどうだ。この一曲だけで、一瞬にして青春時代の心境に連れ戻す
難しいドイツ語もここだけは、どこかの通いなれた大学のゴシック校舎のように親しみを持てた


当時、と言っても高校時代にまで遡ってしまうが、「我が青春のマリアンヌ」という映画があった
ジュリアン・ディヴィビェの作品だが、舞台の山奥の寮はドイツあたりだ
菩提樹」との心理的相関性はある
この唄、この映画の森をさまよう青春があった
そう、それはヘルマン・へッセの小説から多く来ていて、ゲーテにも近いと思っていた


明らかに、そのころ僕が探し求め、見つけた理想の心の規範はこの辺にあったのだ
そう、当時はそういう風潮もあって、それは日本のものでは無かった