新しい職能の創設に向けて

【論】    追記:03/09 ●印   03/11 ●●

一級建築士と同等の、別の資格認定基準の設定に向けて



しばし専門的な話。
日本建築家協会(JIA)は昨年6月の総会で、今後の会員は一級建築士に限ることを決め、現在は更に、既存会員のうち一級資格のない者を正会員からはずすことを進めている。
これは、構造設計偽装事件以来、国交省の方針である一級の資格を狭め、「高める」方針に合わせていると考えられる。
またJIAの委員会などでは、既存の非一級建築士は放置しておけば順次、居なくなるということを平気で言う者もいる。●国際的に見て、本当の建築家能力は現在の日本の判断と違っていて、この国ほど技術的知識偏重なことはない。経験は順次深められるとして、数字やデータ、更には言葉では表せない空間創造への感性は、計測しようもない(試験に向かない)として一切問われていない、ということの持つ問題を気にしていない会員がどんどん増えているのだ。もっともどんな立場であれ、個人の能力だけでは設計が完了しきれなくなりつつあり、設計技術や表現技術のパターン化、会議調整による決定がメインとなれば、1設計技師であればいいだけのことかもしれないのだ。そしてそれなら建築士会や事務所協会と変わらなくなってしまう。

ここには、この国の成り立ちにまで遡る深い問題が存在しているが、それだけに一冊の著書になるような複雑な内容を持っている。すでにこのブログでも関連周辺情報を綴っては来たが、そこにある本質問題とは何かを説明するのは並大抵のことではない。
現在一級試験の合格率は7%程度に下がっており、合格のためには予備校に行かねばとても受からず、ここにかける費用は1、2回落ちれば下手をすると200〜300万は掛かることが判っている。これは民間の試験担当機関を育てることに資することになっている。


一方、若者にはこれまでの建築家像への直感的な疑問が生じており、この面からも建築家協会への入会も明らかに減っている。
最近の俗称である「建てない建築家」はどんどん増えており、そのこともある年代を境に、建築家像への大きな落差を生じさせている。
ここまでは専門職内での一般情報だ。
ここからは、このような状況を踏まえて何が可能かについて、今夜、仲間の間で語られたことがあるので伝えたい。繰り返しになるが、前記のとおり何が問題かを述べるのは難しく、それより何が可能かを考えたい。ただし、自己流の解釈に読みかえて述べることにする。
(以下後記)


新しい建築家としての職能分野の明示化についての、一つの考え方には「住宅の資産価値化」への建築家らしい努力を国や民間に見せていくことがあり、そのためには希望するJIA会員を、しかるべき職能存在として認定し、有効性のある空き家や空きマンション、空き倉庫の、必要度に応じてのリノベーションを通して、有効活用や付加価値化を提案していく。これは既存の建築性能診断とは別で、デザインにより中古住宅などの再販価値を高め、ひいてはまちの景観向上も配慮していく「再生から新しさを導く方法」の提案である。「デザイン・リノベーション・アーキテクト」(DRA)とでもしようか。
そこには時代を経て、住宅やビルが技術も素材・設備も耐久性能を上げてきた経過や、一般の住居への理解と愛情も増してきてる社会環境、資産価値としての住宅の向上なくしては民活も期待出来ないと配慮する国の施策の背景もある。何よりも人口減により、密かに施行された「空き家対策特別措置法」にも見るように、空き家の持つ問題はどんどん増えている。●空き家のままにしておくと各自治体が調査の上、「特定空き家」として依持管理を指導、従わなければ更地と同じ6倍の固定資産税請求となる大問題が出てきたのだ。いやでも空き家のままにしておけなくなった。
また昨年8月に施行された「改正都市再生特別措置法」により、地域における拡散居住を拠点にまとめようという計画も影響がありそうだ。
DRAの活動には、中古物件の売り主がメンテナンスを大切に考え、コストと時間を掛けるようにしむけ、買い主もその質の維持程度のチェックにコストと時間を掛けるようにする公知化された運動や、売り買いの両方から手数料を得ようとするために起こる、不動産仲介業者の中古物件情報の隠ぺいによる両手取引にブレーキを掛ける運動も視野に含む。


●●以上の可能性は、実は主題の一級建築士の別版と言うことではなく、一級の資格がなくてもよい、取る必要がないという話に繋がる。その場合は、プロデューサーとしての参加となり、大規模改修などには資格者の協力を求める。実際には設計実務への経験があり、十分な才能を持ちながら何かの理由で資格が取れていない場合の救護策となる。

(追記の予定)





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