国立競技場問題

【論】  大騒ぎになった国立競技場問題



2016年1月21日追記
この問題も、一段落して、大成建設グループが設計施工することになった。建築設計界にとって大打撃である。まてよ、と言われるかもしれない。隈研吾が設計したではないか、と。隈氏は結論的に言えば失礼ながら「お飾り」である。もっとも、外観プランなど基本的な提案はしているが、時間的にも、技術的にも大成がこれまで準備してきた観覧席を中心とした設計技術案を生かして協力したというのが実情のはずだ。これは歌舞伎座の設計などでも同じようなことが行われていた。
要するに、独立した建築家などいなくても、むしろ今度の場合などは居ない方が企画は進めやすかったのだ。事実、設計と施工が一体であることは、今回は認めるという都の判断が出され、これにより、なし崩しに、建築家協会が主張してきた「設計施工分離」(施工者だけだと客観的な監理が出来ないとしての訴え)が退けられてしまったのである。
以下は、安倍総理が中止を発表したその日の直前の建築家協会会長プレスコメントについて、仲間内での議論から生じた疑問の紹介だった。
その時の建築家協会内での混乱状況を現している。


                    *         *         *


以下は、建築家グループ(JIA日本建築家協会港地域会)意見のまとめのための個人意見として書いたメールの参考転載。



以下別記のMさんの意見同感です(補記:合意を得て、最後に転載の予定。まだ本人の了解を得ていないが、新聞社に送ったとのこと)。
加えて、①JIAとして東京都に行った提案はどうなっているのか、②これまでの経過から見て、あまりの無責任な関係者を見ていても、これからの最重要懸案である「決定責任者」が、まだ出来ていない第三者機関のアドバイスに譲るような様子は当面考えられず、裏面で相変わらず「金を出す行政側の意向」で決まりそう。その無責任さの反面、利権の確保には猛進する「その世界の人間たち」にどう立ち向かうかの戦略が本来必要。今回、嫌になるほど学んだことだ、③槇さんらの提案はどう受け入れられるのか(景観保全、安全避難なども含め)、④7月17日の当協会会長の提言はいささか疑問。何とか判断して、「白紙撤回」を安倍総理が発言する直前に発表したのかと考えてみたが、それにしても(地域連携会議、地域サミットの話題になるだろう)。⑤1300億が最初の条件だったとのことだが、北京の鳥の巣が430億、今度のロンドン五輪が650億、横浜の日産スタジアムが603億から考えると、これでも多すぎ。800億位でいいはず。そこから出発しないと、⑥開閉式屋根は、ローラーとモーターで作動させる多軸機構(従来型の力学依存)である以上、規模に比して開閉のための平行移動が難しいと思われる。作業に時間を取られる(雨が降ってきたらすぐ閉められるようなものではない)し、メンテ費用が年間1億から5億とか。これによって芝の育成問題もある。また、屋根を閉める8万人収容のイベントは年に1,2回のはず。こう考えると、よほどの技術革新が無い限り、つけない方の選択しかないと思われる、⑦すでにザハ事務所には17億払っている(朝日新聞7/18)。まだ請求訴訟されるかも知れない。設計料請求には抜かりない。日本の建築家たちがこんなに干上がっているのに。一般社会には、多額の設計料が払われたという現実だけ捉えられて、日本の設計界の実情には触れられることも無い、⑧「白紙」の意味の理解の仕方で問題が生じそう(これまでの本プロポーザル参加落選者の位置づけ。再選設計条件をどう、誰が決めるのかなど。それらによっては白紙見直しではなくなる。)、などが問題意識にあります。


このことの連絡でIさんが「結局、建築家協会(JIA:会員4500人余り)は槙さん一人に負けたのだ。登録建築家のことなど問題にならない」と言ったのが印象に残っている。建築家が、実は何に向かって戦わねばならないかを、槇文彦氏が教えたのだ。