*ホリデイ The Holiday 

*ホリデイ The Holiday                          

           

この映画には、キャメロン・ディアスとケイト・ウインスレットが出る、面白い組み合わせ。
キャメロンは日本でも最近の携帯電話機のCMでおなじみ。大きな口と大きな表情、それに抜群のスタイルで歩き回る。なるほどカリフォルニア生まれの女らしい。
ケイトは「タイタニック」でおなじみ。あの時の少女っぽさがこんどは大人役になった。いかにもイギリス女らしい。
ロスで働くキャメロン(アマンダ)は男(夫だったかな?)を投げ出し、ロンドンで働くケイト(アイリス)は同僚に惚れた男を奪われる。
この二人がインターネットの住宅期間限定交換サイトで知り合い、傷心をいやすために互いの住居に住み始めるという、奇抜なアイデアによるコメディ・タッチのストーリー。


で、久しぶりに「美しい映画」を見た。
映像は細やかで、それぞれの地の風情や、二人の性格と個性に合ったファッション傾向も出ていて楽しい。それより、なにより最近のあくどいトレンディ・ドラマやバイオレンス・アクションの津波の中では、レトロっぽく、かなりゆるやかな構成と慈愛に満ちたまなざしの仕上がりで、それが「美しい」のだ。
思い出して見ると、最近の映画は往年の、日常的だが心温まる映画が少ない。
この映画には際立った技法は無く、ストーリー展開も常識的だ。それだけに「あえて見せるもの」が少なく、間延びしていて冗漫と取る観客もいるかも知れない。しかし、それがこの映画らしくしている。主題に直接関係ない状況シーンもたくさんある。
脚本は相当練られていて、こんなにきちんと自分が説明できたり、多弁になれるものだろうかと、少し疑いを持ったが、この対話が重要な心理変化を説明する鍵になっている。
更に、音楽(ポップス系)が凝っているようだが、専門外。監督はこれらの音楽を聞きながら映像を考えたらしい。


やはり、監督は女性だった。「恋愛適齢期」のナンシー・メイヤーズ。
監督は自分を語ったのだ。今年、58才くらい。優しく繊細な感情を画面全体にちりばめる事に成功した。キャメロンもじゃじゃ馬みたいだと思ってはいたが、この中ではまじめな女の風情。ケイトも思い切りが悪く人のいい女を演じている。
もちろん、ついにはハッピー・エンド。
これは名づけて、「大失恋からの立ち直り法」(映画ライターの山中久美子さん)を伝授する映画だ。
彼女によると、「監督がいいたかったことは、大人になっても私たちはまだ知らない“私”をたくさん持っている。だからひとつの恋を失ったくらいで、自分を幸せにしてくれる相手に出会うことをあきらめないで!ということなのかもしれません」と言っている。
もう少し続けてもらおう。
「そして恋が愛に育つのを阻むものがあるとしたら、それはまた新しい恋を始めて傷つきたくないと自らを守る気持ち。でも旅先という解放感、2週間という期間限定だからこそ、アマンダもアイリスも鎧を脱ぎ捨て、ビーチで日光浴をするごとく、裸の自分を新しい人間関係の中にさらす勇気が出たのでしょう。率直な自分を取り戻せば、運命の女神はきっとあなたに微笑んでくれるはずなのです!」
ライターの佐藤淳子さんもここから、「旅の魔法にまんまとかかろう!?」と言っている。特に自己喪失気味のアイリスが、「雪の積もるロンドン郊外のコテージから陽光あふれるロスに飛び、アマンダのプールつきの豪邸で過ごし、さまざまな出会いを経て力を得た」ことを旅の魔法として称揚している。


ということで、ここでは相手役の男たち(ジュード・ロウジャック・ブラック)の話が全然出ず。
今晩は女性向き(?)のお話になった。そういえば、映画館の観客の多くは女性だった。
で、なぜ、この日記になったのかはちょっと不明。
多分、僕もアマンダやアイリス、つまり画中のキャメロンやケイトが好きになったのだろう。