今後の住宅設計業界の姿

それは夢か、現実となるか


Prospect for architectural design of dwellings in Japan


住宅設計の現状と展望   ●以降11日追記 ●●は14日追記



建築の中でも住宅の設計は、面倒臭く、手間暇がかかり利益も出ないきつい世界だということは建築家ならみな知っている。
それでもやるのは、やらなければならぬ義理がある、こういう世界しか仕事がない、こういう所からしか始められない、うまくすれば自由度は高い、などの理由による。
このため、身内や親戚縁者といった所から始めるケースが多く、支払いも確実なため契約などもせず、瑕疵責任などもまあまあで済まされる事も多い。

こうして、ベースとなる建築設計の基本が曖昧のままにされる世界を作り上げる事になる。加えて木造住宅の場合、構造計算があいまいとなり、経験値の方が生かされてくる。もともと、これが大工さんの世界とその信用だった。

耐震偽装と言われる問題が起きてから、現在では、この工法、この世界が激変に見舞われているのは素人でも感じ取れるだろう。

そこに昨年の建築基準法の改正(すでに「改正?」として話をした)以来、建築工事の流れに支障を来たし、工事減は6,7割に及ぶということ、そこへサブプライム問題の不安、さらには原油を始め、資材の高騰の追い討ちが加わって、建設業界が激震に襲われている。当然、設計業界にも直接の影響がある。


そういうベースを知った上で、国レベルの対応と現状について、意見を聞く機会があった。

(続きは後ほど)の続き


●ここからは専門領域の話です。特に関心のある方はどうぞ。


今年の後半から来年にかけて、設計者や工務店に大きな法的変化が訪れる。まず、
1)本年12月に「確認検査4号特例」が廃止される予定。
2)建築士法も同時期に改正され、さらに来年も改正される。
3)住宅瑕疵担保履行法が平成21年10月1日に施行される。

以下、簡単に解説すると、
1)これは構造設計一級建築士が設計しない場合、施工図としての伏図、軸組織、壁量計算書等の提出義務化が必要ということで、実際、構造設計事務所に設計してもらい、計算書を出してもらう以外になくなるということ。(現状では、工務店直受けの9割は伏せ図を描いていないとのデータがあるようだ)
2)建築士の定期講習会受講義務化。構造設計一級建築士などの資格稼動開始。来年6月の改正では、この構造設計一級建築士などによる法チェックの義務化。新建築士試験の開始がある。
3)建設業者、宅建業者は、新築住宅の発注者や買主を保護するため、資力確保のための措置としての保険への加入、または保証金の供託が義務づけられる。


なぜ、このような対策が取られ始めたかは、すでに述べた環境変化によるのだが、この動きをポジティブに受け取ると、造り捨てのような建設の考えを改めようという考え方にもなろう。

そこで現在、200年は持つ住宅をつくろうという「200年住宅ビジョン」が自民党国交省からも構想として上がっている。

●●この狙いと中身は二通りあり、一つは法整備、もう一つは予算措置で、前者は「長期優良住宅普及促進法案」(本年2月22日閣議決定)、後者は先導的モデル住宅に対する認定とそれに対する金融支援や税の控除などが検討されている。
この後者の事業には178億円が予定され、更にCASBEE(地球温暖化に関わるCO2排出基準対策を盛り込んだ環境評価)認定に90億円を見込んでいるそうだ。
そこには日本の排出するCO2の42%は、建設工事関係で出しているというデータがあるからだとのこと。

しかし余談ながら、これは1)世論対策、2)洞爺湖サミットに向けてのエコ・アピール、3)既存不適格建築への対応姿勢の強調、4)年金制度の崩壊の影響、などからあわてて考えられたものではないかとの邪推も生まれている。

(この続きはまた後で)