イタリアの公害問題

【情報】●印28日。後からの連絡で追記あり

ナポリのゴミ公害は有名になったけれど、もちろん、それだけではない


過日の深澤さんの生なイタリア情報は、話題になったようです。
今度は、現地の深刻な公害問題を伝えてくれましたので、お知らせします。こういう問題の紹介の仕方は、塩野七生さんではあまり教えてもらえないかもしれません。



大倉様

その後お元気でしょうか。
こちらミラノは曇りの日が多くなり肌寒くなってきました。
所謂、ミラノのグレ−とでも言えますか、落ち着いて考えるには良い明るさです。
とは言いましても、ここは、何十年もただ考えているだけに落ち入らない様注意が必要ですが。


既にお話したように、イタリアでは色々問題が起こります。
今、あのナポリで又ごみ処理の問題でもめています。また街の中がごみだらけのようです。
原因の一つは焼却所が十分で無いことです。
2004年からのゴミ処理の政府緊急対策で、焼却炉をナポリの近郊に作ったわけですが、故障などで完全に機能せず。建設された焼却炉が壊れたことなどで請負建設会社に対し訴訟問題になるようです。この方面の建設技術では、まず日本では考えられないようなイタリアの技術レベル問題があるのかも知れません。


一方、暴力団の介入による腐敗が指摘されています。
長年、ナポリが首都のカンパ−ニア州は、暴力団カモッルラによって、ビジネスとして不法廃棄物がイタリア中から捨てられる州でした。癌発生率が高い州となっているようです。
故に多くのゴミをある場所(ヴェスビオ山東の裾野)に捨てるわけですが、近くの住民が臭気に耐えかね、また衛生上そこに捨てるな、と云うわけで、ゴミ収集車の進入妨害、車の放火、夜は火炎瓶や大型花火砲火で警官隊とデモ隊の衝突が繰り返されています。


このような環境問題は、現在北部のピエモンテ州では、高速列車(トリノ−リオン間でフランスのTVGと接続させる)の路線とトンネルをどこに、ということで、予定地で住民の反対でもめています。
トレントでは焼却炉の設置をどこにで同じことに。
トスカ−ナ州のチビタベッキアでは、火力発電所の設置に反対して争議があります。
南部のプーリア州では、風力発電所設置で環境団体から反対が出、もめています。
又、イタリア本土とシチリアをつなぐ橋の建設をめぐり環境団体からの問題提議でもめています。もはや50年以上その計画は何回も出され、そのつど潰されている計画で、呆れはてるのですが…。


このような現象、とでも言えますか、英語では、nimby ( not in my back yard ) と言うそうです。
それは「確かに多くの人々に必要だとしても、私の家の中庭に持ってこられては困る」と云う事で、公共とエゴの在り方、調整は、実に難しい現代の問題だと思います。
民主主義は、そこに住む人々の民意を反映させるわけですが、そこにはある限界が在るのかも知れません。


私ごとですが、来月11月4日から12月13日まで帰郷いたします。11月10日から16日まで東京に滞在いたします。その間お時間ありましたならばお伺いしたいと思います。

深澤正篤



こういう各地の公害・環境問題が、観光でしか行かない国でもたくさん起こっているのは、判っているようでも地域名を出されて言われるとショックです。
「ヴェスビオ山東の裾野」と言えばポンペイの近くじゃないですか。
さすがに外国人観光客の多く集まるところは、市がメンツをかけて清掃していると聞いたことがありますが、ナポリはイタリアの問題都市としては有名なところです。
瀬戸内海のゴミ捨て島のこと、足許の東京でも築地の中央魚市場の移転問題などありますが、それでも最近の日本では少し収まって来ているのかな。


●後からの連絡で追記:

補足ですが、ごみ問題の夜の派手なぶつかり合いは2日前から無くなったようです。

色々新聞や、通りのナポレタ−ノの新聞屋の親父の話によっても、ごみ処理の根本的問題は、社会のシステム内における上から下までの腐敗や退廃が大いに関係しているようです(それだけでなくイタリアのあらゆる問題に掛かっている訳ですが)。
国の法を無視する「軍団」(シチリアはマフィア、カラブリアンドランゲタ、カムパ−ニアはカモッルラ)による関与があるからです。
北部のロンバルディアでも警鐘が鳴らされていますが、南部の公共事業には大体、一枚咬んでいるようです。今では、ナポリでは彼らの介入無しに仕事にありつけないとの話です。