ジャンヌ・モローを悼む

Condoglianza alla Geanne Moreau.



今から思えばジャンヌを知ったのは、彼女がそれなりにかなり若い頃だったのだろう。当然、僕は青春真っ盛りの青二才だった。
ジャンヌとはジャンヌ・モロー。どこでどの映画を見たのかも定かでないが、特に記憶に残るのが「恋人たち」(1958:黒白映画)。
結果的に、彼女のような存在を通してフランス女性のあるパターンを知ったし、我が心の内にフランス文化が他人事でないような親近感を創り上げたのだろう。
今にして判ったのだが、監督があの「死刑台のエレベーター」のルイ・マル、撮影が同じ映画や「太陽がいっぱい」のアンリ・ドカエだった。なるほど、いいはずだ。


月明かりの林の中をさまよう二人、ボートで身を寄せ合う二人。ベッドでの二人の姿は、今でも克明に意識に残っている。
ストーリーはその日に会った男と一夜の内に結びつき、翌朝、夫の見ている前でその男と一緒に去るというもの。その姿は不倫などという次元を越えて、人生のびりつくような一瞬を伝えていた。その役を怖いような繊細さで見せたのがジャンヌだった。
あゝ、青春!
こんな映画にどぎもを抜かれ、街を駆け回っていたのだ。
「好きな男と目が合えば電流が流れる。そうなればもうセックスしないわけにはいかない」とか言ったのは確か彼女だったと思う。
あの不満そうで肉欲的でありながら知性的、ずっと年上ながら、それでいて好きにならずにいられないジャンヌのイメージは、生活のあちこちに染みついていった。
(7月31日89才で死去:思い出すことがあれば後述)




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